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水引作家
舟木香織様

舟木香織様のご紹介

水引作家

2010年に水引を習い始め、2015年に「喜結」として活動を開始、古典に縛られない
自由な発想でパネル作品から立体まで制作。企業からの依頼や個展の開催など水引の
可能性を広げています。
現在では、日本だけでなく海外にも活躍の場を広げている水引アーティストです。



喜結-kimusubi-
https://kimusubi.tokyo/
舟木様

舟木様にとって「食」とは

「クリエイション」

ツーショット写真

左:井上祐子様(インタビュアー)
右:舟木香織様
(以下敬称略)

取材日 2023年9月19日
舟木様

井上:水引は、結びひとつひとつにいろいろな意味もあり、奥が深いですよね。
その喜結さんという名前の由来などはありますか?

舟木:もう本当に、字面のままで、喜びを結ぶ。だから、喜結では不祝儀は作っていなくて、基本的にはおめでたい時のための水引を専門に結んでいます。ちなみに、不祝儀用の結びもいろいろありますし、関西の方では、黄白と言って、法事は黒と白じゃなくて、黄色と白というところもあるんです。

井上:水引の文化は日本の中でも地方によってそれぞれ違うのですね。

舟木:そうですね。冠婚葬祭の風習は地域によって違うので、土着の文化に合わせて、水引もそれぞれ結ばれてきているのです。結納も、関東式、関西式、あと京都はまたちょっと特殊な流れがあって、九州式もあります。

井上:この水引の糸は機械で作っているのですか?

 

舟木:はい、機械で作っています。芯の部分は昔は和紙でしたが、現在はパルプのテープを撚って「こより」を作るのが主流です。その軸芯に色を付けたり、レーヨンやラメ糸を巻きつけた水引が出来て種類が大変増えました。



井上:水引も産地があるっていうことですか?

 

舟木:愛媛県の伊予水引、長野県の飯田水引があり、昔はこの2拠点で製造されていました。昭和天皇御即位の大礼の際には宮内省(現在の宮内庁)から50万本もの紅白水引生産の勅令が出て、水引謹製場という清められた建物の中で正装をして正座をして宮内省の番人の目が光る中で生産したようです。昭和初期ぐらいまでは手生産だったと記憶しています。

 

井上:遡ると、水引はいつぐらいからあるのですか?

 

舟木:諸説ありますが水引の始まりは遣隋使からと言われています。

日本と中国は貿易をしていて、遣隋使が日本から行って、向こうからも日本に来て・・と品々が行き交う中で、中国からの贈答品として届いた箱に片一方の紐を赤に塗った麻紐が掛かっていたのだそうです。その後、日本文化として定着していったという説があって、私はそれが一番しっくりきています。

あとは、船旅の無事を祈る魔除けの、お守りの赤っていう説があります。

 

舟木様
舟木様

井上:水引は、ご結婚されてから始められたとお聞きしましたが、その前はどのようなお仕事をされていたのですか?

 

舟木:前職はアパレルで販売のお仕事をしていましたが、新店舗のマーチャンダイズをやったり、ポップを作ったり、いろいろと担当していました。

水引については、結婚する時に結納飾りを見て、「こんなに立体的なことができるんだ!」と興味を持ったことがきっかけで水引を習い始めました。

 

井上:初めて作品を見させてもらった時に、本当に全部が立体的で、結びとか、宝船とか、とてもきれいで驚きました。今、お教室などはご自身でどこかでやっていらっしゃいますか?

 

舟木:いま、英語で教える水引のレッスンを3人体制で月に2回開講しています。コロナで3年間、海外に文化交流に行ってないので、主に日本にお住まいで日本文化をもっと深く学びたいという外国人の方を対象に開講しています。コロナ前はインドと台湾には直接行きました。作品だけはフランスとイギリスにもお送りしていました。

井上:海外の方にも喜ばれそうですね。最近の水引のお仕事を少し教えてください。

 

舟木:ルイ・ヴィトンさんは、ご招待のお客様だけのイベントで導入していただきました。京都や大阪で展示会を開催したり、久々に文化交流を再開しサウジアラビアにも行ってきました。
海外の方にとって、例えば「折り紙」はYoutubeで見てやってみたいと思ったら、世界中どこにでも紙はあるのでチャレンジできますが、水引は素材自体が日本人しか使ってないので、世界中どこでも手に入らないのです。リボンやロープという紐類はあっても、紙で出来ているこのような紐がないのです。海外の方には素材もそうですが、ぜひ本物の作品を見ていただきたいと思います。

 

井上:水引の紐は舟木さんの作品の素材ではありますが、元々は日用品ということですよね。

 

舟木:髷を結う紐も水引の軸芯である「こより」の部分を使った元結(髪の根を結い束ねるのに用いる紐(ひも)のこと)ですし、それこそ帳面を綴じる紐も元結でした。とても丈夫な紐です。そういう生活雑貨という側面と、折り目正しくという言葉通りで、紙の折り方から水引の本数、結び方まで全て決まっていた武家の礼法という両側面があったものです。

 

舟木様
舟木様

井上:食の世界とどこか似ていますよね。

 

舟木:食も、おせちとかだと「右紅左白」などありますよね。そのように、右側に紅いもの、左側に白いものという並びに陰陽五行の意味があったり、華やかなものが右側に来るような流れがあったりしますが、そういう型や意味などは大事だなと思います。
水引も技術としては、昔からある結びの組み合わせですが、作り方を見れば作れる人はいると思いますが、そこにストーリーを乗せているからこそ作品に意味が出ると思っています。
伝承ではなくて、伝統というものは、やっぱり革新を重ねて、その時代に生きる人たちに、伝えていく人が新しく伝えていくための方法を模索し続けないといけないと思っています。
今では生活から遠い存在になってしまったので、また水引を当たり前に日本人は知っているというところまで持っていけるのが一番良いなと思います。

井上:先程の「本物」ということは、私も食育でよく言っています。「なぜ授業で出汁をとることを教えるの?」ということに似ていると思います。美味しいって感じるものはありますが、やっぱりこれがお出汁だよっていうことを子どもたちには知ってほしいです。私は父親に、良いものを見なさいと教えられたので、本物を見て、食べてもらいたいと思っています。

 

舟木:我が家もそうでした。私の父も「なるべく日本の食事をするように。海外の食事を食べても、日本食の良さが分からないから」と、小さい頃によく食事に連れて行ってくれていました。高いお店だったのかもしれませんが、食器とか器と料理のバランスなども学ばせてくれていました。

 

井上:よくわかります。水引の場合は、食や食器よりこの世界に携わっている方もが少ないと思うので、より一層本物を見るっていう機会をもっと発信して、お子さんに知ってもらいたいですね。

 

舟木:両親は静岡で楽器メーカーの寮の運営をしていて、父が調理師免許を持っていたので、両親が朝ごはんと夕ごはんを作って、食堂でみんなで食べるっていう古いスタイルの寮でした。楽器好きの人が新入社員で寮に入ってきていましたが、試作品のピアノが置いてあって、酔っ払うとエンドレスブルース大会が始まるような寮でした(笑)

 

井上:水引でもト音記号のデザインがあったのは、そのような環境の影響が大きかったんですね。

 

舟木:社員寮にいたので、みんなでご飯を食べることが好きです。いろいろな地域やご家庭の方が一緒に暮らしているので、食べ方のこだわりがあったり、カレーだったらエンドレスにおかわりする人がいたり。自分の食べ方が皆さんそれぞれにあって面白かったですね。
マレーシアから来た方はハラルフードじゃないと食べられなかったり。

舟木様
舟木様

井上:少し舟木さんの食に関するルーツをお聞きしましたが、水引を通して幅広い活動をされている舟木さんですので、食の幅も広そうですね。先日は、インドのひよこ豆のフリッターで「ワダ」という料理を作ってもらいましたよね。

 

舟木:今日はチキンを解凍してきたので、カブサを帰って作ろうかなと思っています(笑)これは、サウジアラビアのパエリアみたいな料理で、炊き込みご飯を家に帰ったら作ろうと思っています。

 

井上:日本でもいろいろな場所に行かれたり、寮でいろいろな方と交流をしたり、海外にも行かれている舟木さんにとって食とはどういうものでしょうか?

 

舟木:もちろん食べないと暮らしていけないので作るということもありますが、私の中で料理をすることは気分転換にもなっています。コロナで出歩けない時も、スーパーマーケットに行っていろいろな食材を買ってきて、実験のようにいろいろな料理を作っていました。
仕事で煮詰まった時は、しっかり料理をして気分転換しながら、クリエイティブに臨む。料理は水引の作品作りとも似ていて「クリエイション」だと思っています。

 

井上:水引作家さんとして、これからの活躍を楽しみにしています。
そして、私も日本の食文化を海外に伝えていきたいと思っているので、何か一緒にできればと思います。これからも宜しくお願いします。

ツーショット写真
 

【作品のご紹介】

舟木様の作品①

 

舟木様の作品②

 

舟木様の作品③

 

舟木様の作品④

 

舟木様の作品⑤

 

舟木様の作品⑥

 

 

井上祐子様には、各業界の方々の『食』やその人の人物像にフォーカスするインタビュー企画のMCとしてご協力いただきます。今後もお楽しみに!

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