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株式会社オーガニック・キッチン
代表取締役 浦美樹子様
浦美樹子様のご紹介
代表取締役
2009年に株式会社オーガニック・キッチンを設立以来、有機栽培や自然栽培された野菜が
たっぷり入ったお弁当を皆様にお届けしています。
株式会社オーガニック・キッチン公式サイト
https://www.organic-kitchen.co.jp/
オンラインショップ
https://organick.base.shop/
浦様にとって「食」とは
「選ぶ 食べる 元気!」
左:浦美樹子様
右:井上祐子様(インタビュアー)
(以下敬称略)
井上:はじめに浦さんにとって食とは何ですか?
浦:私の中のキーワードは会社の名刺にも書いてありますが「選ぶ、食べる、元気!」が非常に重要だなと思っています。元気の源は食が多くの割合を占めていると思っているので,それをいつも自分の中に持っています。
井上:選ぶっていうのはどういう場面でしょうか?食べる場所を選ぶとかそういうことじゃなくて 質を選ぶということでしょうか?
浦:何も知らないで食べるよりは、これを食べる。という意思は大事だと思っています。例えば、誰が作っているとか、野菜の質や調味料も何を使うとか、しっかりこう選ぶ。食べることは、投票、商品を応援することだと思っています。この商品がいいなと思ったら、それを買い支えるそんな気持ちです。
一次産業の人たちがいるから、私たちの元気のもとはここにある。土のそばに元気があるみたいな感じですかね。
井上:浦さんの考える食との向き合い方から、オーガニックキッチンを起業するきっかけを教えていただけますか?
浦:今年で16年目になります。起業をするちょうど2年前に西邨マユミさんの講演会で偶然スタッフとしてお手伝いをし、マクロビオティックを初めて知りました。体にいいなと感じ、食材の質が重要だと聞き、ただ台所で作るだけじゃなくて畑に行きたい。どんなふうにどうやってできているのだろうと興味がわきました。
2年間ぐらいは農家に行き続け、マクロビオティックの教室に通い、当時、東京都内のガイドブックに出ているような健康をうたったレストランに行って、リサーチもしました。2年経って、別に機は熟しているわけでもないですが、もうやりたい、もうやるぞ!くらいの勢いで。
ただ、飲食店の経験や調理経験がないにもかかわらず、マクロビオティックで、都会で働く人に元気になってもらいたいと思っていましたし、農家さん、有機農家を応援したい!その2本の柱が、起業のきっかけでした。日本を変えるぞ、みんなを元気にするぞ、みたいにすごく大それたことを思っていました(笑)東京1100万人の胃袋を変えるぞ!絶対より良い循環になると思っていました。
やってみると、なかなかですね(笑)
井上:16年経つと、やっぱり政治も変われば環境も変わり、農家で収穫される野菜も変わってきているかな・・・と思うんですけど、その部分について、変わったなと強く感じることは何ですか?
浦:オーガニックという言葉が15年前は、メディアでは流れない言葉で、オーガニックや有機は、知る人ぞ知るぐらいのイメージでした。ただ、2020年の東京オリンピックが決まったというあたりから、一気にSDGsと合わせて、オーガニック、ビーガン、ベジテリアンが世に知れるようになってきたという肌感覚です。最初の10年くらいは、オーガニックって何ですか?といった感じでした。
よく言われたのは昼間のお弁当は500円、ワンコインだよねという時代に、700円とか800円で売っていたので、「なんで同じお弁当なのにこんな高いの?」とよく言われましたね。ただ食べていただいた人には、何か違うと感じてもらえました。
「おいしいね」だったり、「他ではどこで買えるの?」とか、そういう言葉はすごく励みになりました。だから続けてこられました。
井上:お客様の声と、商品を待ってくださる方がいるからこそ毎日の製造と野菜の収穫に出向く活力になっているのですね。先週もどこかの畑に行っていましたよね?
浦:長野県に行っていましたね。どんどん有機農家さんが増えているという印象です。
今回、例えば長野で行った農家さんのうち、もともとは会社勤めをしている時に東京で東北大震災にあって「生きることに直結する仕事をしたい」と長野に移住し、農家を始めたという人とか、毎日の満員電車に揺られて仕事をするのはしんどい、地に足ついた方が好きと人生を考えるきっかけがあり、そういう人たちと共に「たべるものをつくっていきたい」と思っています。
井上:新しい世界に踏み込んだ方が有機農業を始めている印象を感じますね。
浦:そうですね。今お付き合いさせている農家さんは年齢的に40代の人たちが多いですかね・・・40代、50代。ただ60歳後半くらいの方もいて、その人はエンジニアでしたけど、そのエンジニアの技術を活かしてブルーベリーやアスパラを作り始めたり、やっぱり有機農業を志す方が増えていますね。
あと、もともと農家になりたくて、どこかで修行を何年かしてから独立っていう人が多くて、離農していく人の方が圧倒的に多いから土地が余る。貸していただけるところが増えてくる。
マイナスと思うけど、反面、新規の人たちにとっては、農地の確保が、以前よりスムーズになりつつあると、今回話を聞いて思いましたね。
井上:野菜もいろいろと扱いながら、種類も豊富なメニューのお弁当を製造されて、販路はオーガニック野菜を扱う店舗さんが多い中、最近学校給食など教育的分野の食の提供も始めていますが、以前から広げたい分野でもったのでしょうか?
浦:起業する前に、アリスウォータースさんの本を読み感動しつつも、日本では無理だと半ば夢物語だと思っていました。もともとはレストランからスタートしているんですけど、自分たちで作る野菜を使うレストラン。
それがだんだん学校で、エディブルスクールヤードといわれる食育へ。ある熱心な先生からのご依頼でお弁当を作ることになった時には、アリスウォータースさんの本を思い出し、夢物語ではなく実現できるとワクワクしました。子どもたちに食べる環境づくりをしたいと思いました。
井上:浦さんの食の根源「選ぶ・食べる・元気!」をたどると、子どもたちの食のセレクトってすごく大切だなって感じます。子どものころから本質を知らないと、大人になってから、本質を理解できず、身体をつくるための食のサイクルが継続できないと思います。食の根源について一番戻りたかった部分に、たどり着くきっかけにつながったのではないでしょうか。
浦:そうですね。コロナ期間中に学校給食に携われることができたっていう。それもすごく大きい。
今後もっともっと増やしたいと思っています。
井上:でも、学校給食って制限が多いですよね。
浦:学校としっかり取り組んでいきたいと思っています。
井上:生活の環境も変わってくればコロナウイルスの大きな影響があったり、そんな中、本当にオーガニックキッチンとして目指してきた飛躍は前進されていると感じますが、今後もっともっと何か、例えば生活に寄り添うっていう部分で、今は健康志向のための方からスタートして、それが小学校とか学校の職域に広がったりとか、今度はもうちょっと別なビジョンとしては何かやっていきたいというか?
浦さん:やりたいことは沢山ありますが、あんまり欲をかいてはいけないなって思っています。
主に首都圏のオーガニックスーパーにお届けしているので働いている人たちが手軽に買える日々のお弁当。どこにでも買える場所があったらいいなと思っています。
2つ目に子どもに対してはきちんと、オーガニックを知ってもらいながら食育を進めていけたらいいなと思っています。
3つ目に冷凍弁当は、全国にこういうお弁当が欲しいという方に届けていきたいと思っています。
井上:お弁当販売でたくさんの胃袋を支えていると、やっぱり従業員の方や配達に関する部分とかってすごく、ご苦労されると思うのですが、心地よく働いていただくための工夫とか考え方などはありますか?
浦:数年後には、かなりのパーセンテージが65歳以上を占めるってなった時に、そういう方が、いつでも働ける、心地よく働けるという環境づくりがこれから必要と思っています。ここで働きたいと思ってもらえるようにしたい。
井上:働いていただける環境を作るっていう点も含めて、さきほど野菜を買って応援したいという部分もそうですが、私がリンクした言葉が、食べることによって豊かな生活が「巡る」ことを理想とされているのかなって感じました。
浦:確かに!うまく言葉が見当たらないですけど、「巡る」って言われるとそうですね
井上:本当に健康のものを作るために、「選ぶ・食べる・元気!」をしてもらって、その元気にいられるからまたここでも働いてもらえるとか、そういう形で、浦さんが理想とされていることがうまく「巡る」といいなと思えるお話ばかりだなって思いました!
浦さんにとって、今後の食とかいろいろつなげる中で、やりたいことは欲張らない ということでしたが、改めてお尋ねします。ビジョンというよりも目標というか、やっぱり最終的にはここに行きたいよね、みたいなのものはありますか?
浦:それこそスタートの時は、1100万人の東京の人口の胃袋、みなさんの胃袋を変えるみたいに思っていましたが、それがなかなか本当に難しいんだなと思うと、日々一歩ずつ歩むことで変わる、自分もより良く過ごせるっていうところがテーマ。日本、東京を変えるぞ!とか、なくなってきて、逆にもう本当に必要とされるところにお届けする、それが満足、それが私の一番だと思う。
そういう方たちが一人一人増えていくことをやっていきたいなと思っています。
井上さん:本日は貴重なお話をありがとうございました。
井上祐子様には、各業界の方々の『食』やその人の人物像にフォーカスするインタビュー企画のMCとしてご協力いただきます。今後もお楽しみに!
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