社会福祉法人合掌苑様
食の安全に関して大切にしていること
「HACCPと多様性についての取り組み」
社会福祉法人合掌苑様
住所 | 東京都町田市金森東3-18-16 |
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ホームページ | https://www.gsen.or.jp/ |
事業内容 |
特別養護老人ホーム |
ご担当者様 |
常務理事・統括マネージャー 神尾昌志 様 |

まずは法人設立の経緯、背景を教えてください。
神尾様:先代理事長が市原秀翁と申しまして、曹洞宗の僧侶でございました。もともと東京都中野区に竜昌寺というお寺があったのですが(現存しております)、東京大空襲の時に中野区一帯が焼け野原になって、寺が奇跡的に焼け残りました。当時被災された方々、お家を亡くされた方々を、この竜昌寺の境内でお世話をしたことが、老人ホームをつくるきっかけになり、その後に境内ではなくて、公的な施設を作って、介護サービスを提供しようという先代の思いが背景にあります。
その思いの中で、非常に強いものが、今の当法人の理念である「人は尊厳を持って権利として生きる」です。当時お世話をしていた方のお一人が、玉川上水に身投げをしてお亡くなりになってしまった。遺書には「ただただ慈悲の精神でお世話してもらい続けることは心苦しい・・」と書かれていて、先代の理事長たちが、一生懸命の努力をしていたにもかかわらず、身を投じてしまわれたということに大変ショックを受けます。
そして、理事長たちは皆で考え、現在の基本理念が生まれています。「人は尊厳をもって権利として生きる」慈悲の精神は大事ですが、それだけではその方の真の尊厳は守れない。公的な場所を作り、安心して生活してもらうことで「人は権利として生きる」ことができる。それが合掌苑の今、町田市にある大きなきっかけであり、あゆみであります。
主な事業内容を教えていただけますか。
神尾様:昭和35年に町田市で老人ホーム(のちの養護老人ホーム)からスタートして、特別養護老人ホーム桂寮、デイサービス翠の杜、そこに町田市から受託している高齢者支援センター・障がい者支援センター、その他にケアマネージャーが在籍している居宅介護支援事業所があり、総合相談窓口として機能しています。また18歳以上の重度心身障害者の方のデイサービス「わさびだ療育園」があります。あとは在宅サービスとしては訪問介護事業も行っています。
全体ではその他に横浜市瀬谷にある「輝の杜事業部」が2003年からスタートしまして、主に40室の住宅型有料老人ホームを運営しており、同時に訪問介護、通所介護、居宅介護支援と在宅サービスの提供もしております。
そして翌年の2004年に、南町田に鶴の苑事業部をオープンして、こちらも基本は有料老人ホームになります。住宅型有料老人ホームと介護付有料老人ホームが一つの施設の中に複合的に入っている珍しいタイプになっており、全部で115床のお部屋があります。輝の杜事業部が40床なので、約3倍の大きさになります。訪問介護・訪問看護もサービスとして提供させていただいています。その他デイサービスも行っています。
そういった事業展開されている中で、合掌苑さんならではの取り組みがあれば教えてください。
神尾様:先代の市原秀翁の話をしましたが、理念経営という形を合掌苑では重視しています。そこを我々が脈々と引き継いでいるというところが、合掌苑の大きな特徴なので、理念に対して非常にこだわっていたり、理念研修が定期的にあったり、理念を重要視しているというのが特徴の一つです。
あと、多様性という部分で、25大雇用という取り組みを行っていて、今はいろんな方々と一緒に働く必要があると感じています。以前のような、若くて、元気で、早番も、遅番も、夜勤も全部オールマイティにできる職員さんというのは、なかなか採用が難しいです。
これは合掌苑だけではなくて、少子高齢化の日本としては全国的にそうですが、介護業界は特に人材が重要になりますから、いろんな方々と一緒になって手をつないで事業を運営していかないと、事業継続できません。
人材確保が最大のボトルネックになる可能性があるので、それを見越した上で、障害のある方でも外国の方でも高齢の方でも、一緒に働けるように法人側がいろんな工夫をして、働きやすい環境を整え、採用の間口を広げて一緒に働くということを非常に重視しています。

ホームページを見ると、町田という地元とのつながりをすごく大切にしていると感じました。
神尾様:そうですね。社会福祉法人として、地域に根付くというのが重要となります。これも先代理事長や現理事長が大事にしている事です。先代理事長は地域を「地元」と呼んでいました。地元を大事にする姿勢は今も脈々と引き継がれています。2016年より地域福祉支援事務局を設立し、地域の自助活動をしている団体様に対して、我々独自の活動として最大10万円の助成金を出しています。
社会福祉法人として我々ができること、もちろん金銭的な助成だけではないですが、いろんな活動を通して活性化していくために、やはり資金というものが重要になりますので我々の経常収支差額25%を上限として、毎年毎年、赤字にならないように経営努力をしながら、地域への助成という形で活用しています。
また、「新しい公共の中心として地域に貢献する」ことを重視し、行政的な役割も社会福祉法人として担っていかなければならないと考え、煩雑な手続きを簡略化しながら、しっかりと助成をさせていただき、地域とともに活性化していく、というのが合掌苑の独自な取り組みと思っています。現在、10団体ほど助成をさせていただいています。
その他にも、セミナーの開催や、同業他社の方が施設見学できるような取り組みもされている。
神尾様:そうですね、そこも特徴です。
公益財団法人日本生産性本部が事務局をしている経営品質協議会というものがあります。そこで顧客価値経営の普及・推進の取り組みを行っているのですが、「日本経営品質賞」(JQA)という表彰制度があるのですが、その受賞に向けていろいろ勉強を重ねています。
基本理念、1.顧客本位 2.社員重視 3.独自能力 4.社会との調和 を柱として基本理念に沿った一貫性のある活動を展開していくことが重要となります。その賞を受賞した企業に視察に行くことも多くありますが、視察をする企業は、ほとんど介護・福祉業界以外です。異業種の企業に行くと全く違う多面的な目線で物を見ることができて、いろいろ学びが深まります。
例えば、ネッツトヨタ南国という高知県にあるカーディーラーへ見学に行かせていただいた際に、使用されていたインカムもその一つです。そこでは、ディーラーの駐車場に入ってくるお客様の車をスタッフが待ち受けていて、ナンバープレートを確認し、インカムで受付に何番のお客様がいらっしゃいましたと伝えると、受付がパソコンを使って調べ、お客様の名前と用件をスタッフに伝えます。するとスタッフは停車した車に駆け寄り、ドアが開いた瞬間に、「いらっしゃいませ」と挨拶をしながら受付から聞いたお名前と用件を言って、「ありがとうございます」とお礼をする。
このようなおもてなしの様子を見て、現理事長が介護現場でも使えるのではないかということで、インカムを介護施設で使ったのが始まりでした。まず、デイサービスで取り入れて始めたところ、非常に好評でした。ではこれを全施設に展開しようということで、町田にあるオンザウェイさんという地元の企業さんに頼んで全施設にインカムを導入した経緯があります。
もう一つは、京セラの稲森さんのアメーバ経営ですね。
介護施設でアメーバ経営を導入している施設はありますが、継続することが難しいですよね。ただ我々は2015年からやっていますので、今年9年目と比較的継続しています。経営品質という考え方と、アメーバ経営という管理会計を使い、理念経営を柱にロマンとソロバンの両輪を回して、思いの実現をしっかり行うというマネジメントについて、他法人さんから見学したいという話が多くあります。
コロナがあったので一時的に見学者は減少しましたが、また徐々に増えてきています。特に増えているのは海外では中国からです。中国では日本式介護がクローズアップされており、日本のようなおもてなしや、接遇マナー、介護技術を学びたいという声があります。逆にハード面(建物など)は日本よりもお金をかけています。何千床みたいな大きな施設があって設備も立派で素晴らしいのですが、働いているスタッフの質の確保ができていなくて、「ソフト面の人材育成を学びたい」ということで、合掌苑という名前が比較的浸透しているようです。
経営幹部の方など、介護の施設管理をしている方が来られ、私たちの取り組んでいる経営手法やアメーバ経営、先ほどの経営品質の考え方等をお伝えしています。研修・見学による収入は、介護保険外収入になるので我々としては、制度ビジネスとして介護保険収入がメインですが、この先保険外収入も非常に重要になることを鑑み、しっかりと収入経路を確保して事業継続をしていくということが、我々の責務、お客様の幸せにつながっていくと考えています。
少し話が変わりますが、食の安全に関して大切にされていることを教えてください。
尾張部:2016年に食中毒事故を発生させてしまい食の安全に対する思いを継続、守るために、その仕組みとしてHACCPを学んで取り組んでおります。三事業部の調理メンバーを中心として、毎月1回、食の安全会議を実施。HACCPの基準を作成したので、それに基づいた記録、改善しPDCAを回わせるよう取り組んでいます。あとは多様性を大切にしています。特に調理部門では外国人の方や障害を持っている方も入られているので、その方たちにどうやって安全の基準に基づいた作業をしてもらうかということを,簡単に伝えられるようにさまざまな工夫をしております。
高橋様:金森事業部のことになりますが、特別養護老人ホームなので、食形態もすごく細かくなっていて、その人たちのニーズに寄り添った食事の提供をしています。みなさん元気で笑顔になって、私たちも幸せになるというビジョンをあげさせていただいています。
三事業部の管理の中では、働きやすい職場にするための作業の見える化を実現することと、お客様の安心・安全な食事の提供のためにHACCPリスク管理をすること、アメーバ経営である生産性時間当たりの向上のためにコスト、品質、時間のバランスをベストにするという統一したビジョンがあります。
また横のつながりとして感染症委員会、ダイエット委員会など、相談や勉強が一緒にできる会があって、以前も町田予防さんには三事業部の会議に出ていただて、そのときの問題点に対してアドバイスや、いろいろ協力してもらえるということで、それは本当に強みだと思っています。
貴法人とは本当に昔からお取引させていただいております。
高橋様:特別養護老人ホームでは、前任の栄養士が担当していた30年以上前からずっと検査をお願いしています。以前、サルモネラ菌の陽性が出たことが2回ほどあったのですが、その時すぐに電話で連絡をいただいて、御社担当者にすぐに病院に行ってもらいました。その後、薬を服用してもらったお陰様で2週間で陰性になってまた調理現場に復活できたということもあったので、迅速な対応に本当にありがたかったです。午前中に持ちこみ、午後には結果が分かるのはすごいと思います。
尾張部様:万が一、陽性者が出た時に、大手の会社さんもありますが、発送して届いてからの検査になるので、短時間で個々の対応や処置の仕方を教えていただけるので、すごく頼りにしています。
ありがとうございます。長くお付き合いをさせていただいているなかで、弊社のサービスでいいなと思うものがあれば教えてください。
尾張部様:対応が早く臨機応変に対応してくださるというところです。先日も衛生についての勉強会を開いていただいたり、私たちの要望にもすぐに応えていただいています。
高橋様:前の営業担当の方が、とても熱心で、厨房機器を取り扱っているEye-i Internationalさん(https://www.eye-i.jp/)を紹介していただいたり、他にも、衛生関連の資料をお持ちいただいたり、よくしていただきました。
尾張部様:食の安全衛生会議にも参加してくださって、季節の食中毒の情報やいろいろな勉強会も、その都度開催してくださったりして助かっています。
ありがとうございます。では、今後の展望と当社に期待することを教えてください。
神尾様:衛生管理とか食の部分からすると、多様な人材と一緒に働くことによって、衛生管理を教えることが、なかなか大変だったりする中で、ルールを守って働けるような環境づくりというのが絶対的に必要になるので、今後そういう仕組みをつくっていくために、いろいろなご相談を町田予防さんにもさせていただければありがたいかなと思います。
高橋様:ベトナムの方が金森事業部に4名いて本当に一生懸命働いてもらっています。ただ、なかなか衛生面まで徹底することが難しくて。
尾張部様:日本人の感性と少し違う部分があって、文化も違いますから、汚いという意味をきちんと言葉にして説明しないといけないのですが、それが伝わらなかったりするので、判断の基準にできるルールを作りたいと思っています。また日本の難しい言葉ではなくて優しい言葉で作るということが、これからの私たちに課せられている使命だと思っています。
その辺を一緒にご教授いただきながら作っていきたいと思います。
それから、HACCP認証を取得しようと、一生懸命やっていますが、厨房の構造面の問題など取得するのになかなか難しい状況もあります。その中でHACCP基準を継続して安全な食事を提供するためには、HACCPの取り組みや継続の仕方などの研修を行っていただけると、すごく助かります。
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