認証保育所ウッディキッズ様
食の安全に関して大切にしていること
「子どもの人格を育む保育所づくりー文化資本と衛生管理で高める保育の土台」
認証保育園ウッディキッズ
| 設立 | 2006年 |
|---|---|
| 住所 | 東京都あきる野市秋川6-18-8 |
| ホームページ | 日本子ども育成協議会 ウッディカフェよっちゃんち(Instagram) |
| 事業内容 |
保育の「質」を上げる研修事業 |
| ご担当者様 |
公益社団法人日本子ども育成協議会会長 |
溝口様は、公益社団法人「日本こども育成協議会」の会長であり、また東京都・あきるの市にて、認証保育所「ウッディキッズ」を運営されています。溝口様が保育の世界に入られたきっかけを、教えてください。
溝口様:私が保育所を始めた理由を一言で表すと、「日本の既存の保育を変えたかった」からです。
日本の保育は、労働政策とともに整備されてきました。昭和22年に制定された児童福祉法においては、日中、両親が就労する家庭の子どもを「保育に欠ける子ども」と位置づけました。保育所は、その子どもたちを受け入れ、「労働を補完する場」という役割を与えられたのです。
しかし実際には、両親の就労以外の理由で、「保育に欠ける子ども」はたくさんいました。例えば親が精神疾患を患っていたり、働いてもすぐクビになってしまったりする親をもつ子どもは、家庭での保育が難しい状況にあるにもかかわらず、保育所に入ることができなかったのです。
その一方で、例えば議員のお子さんがすんなりと保育所に入れたという事例があるなど、保育所の審査における行政裁量は必ずしも平等ではなく、制度のはざまで困っている家庭は少なくありませんでした。
私は当時、日本ではまだ珍しい男性保育士として働いていましたが、そのような状況を目の当たりにし、「それなら『保育に欠ける子ども』以外も入れるような保育所をつくろう」と思い、保育所の設立に至ったのです。
木のぬくもりを感じる「ウッディキッズ」の園舎では、異なる年齢の子どもたちが分け隔てなく、裸足でのびのびと過ごしています。溝口様の、保育の理念についてお聞かせください。
溝口様:私が自分の保育園の構想を練るときに考えたのは、日本で整備されてきた「学校的な教育」から離れることです。
今でこそ当たり前にある「学校」というシステムですが、その始まりは1872年、主にイギリスの産業革命期に考案されたベル=ランカスター法という教育手法に端を発します。この手法は、生徒を小人数のグループに分け、優秀な上級生のなかから採用した助教生に、それぞれのグループを指導させるものです。
もともとは、同じ作業をくり返す工場労働者のために考案された手法でしたが、その後、資本家階級が子どもの教育に力を入れるとともに、社会へと広がりました。そして保育所は、労働者階級の子どもたちの預け先として誕生したのです。
こうして確立された学校教育の制度は、同じ年齢の子どもを集め、学習内容を細分化し、段階を踏んで教えます。しかし系統的な教育や、細分化されたカリキュラムは、「子どもの保育」という点から見ると、決して最善とは言えません。
本来、子どもは毎日ご飯を食べて、寝て、起きて、年齢の異なる仲間とワイワイと遊びながら、生きる力や、物事を解決する力を身につけていきます。つまり、「当たり前の日常」を生きるなかで、育っていくのです。私の保育園は、その「当たり前のこと」を「当たり前」にする場にしたい。そんな思いで「ウッディキッズ」を運営しています。
子どもの健全な成長と発達を大切にされているのですね。
溝口様:私たちは、根源的な「人が人になっていくため」の教育をしたいと考えています。なかでも特に大切にしているのは、子どもの自己認識を育むことです。
西欧では、幼いうちから「私」と「あなた」といった個人を認識することで、自己という主体を認識します。しかし日本では、自己の主体は「私」という個人から始まるのではなく、「場」があることによって「私」という主体が現れるのです。これは「場所性の主体性」と呼ばれます。
例えば私たち日本人は、乳児期に母親と自分を同一視する未分化な状態を経ることで、「私とあなた、一緒だね」という共感から自己認識をスタートさせます。つまり、乳児が母親に抱かれている状況で母親を見るとき、それは母親ではなく「自分」なのです。この状況から「個」へと分化していくことで、初めて他者の心が理解できるようになります。
こういった「日本人の心性」を大切にしながら育てることで、子どもの心は満たされ、生きる力となっていきます。
「ウッディキッズ」では、薪ストーブを使ったり、烏骨鶏を飼育したりと、子どもたちが五感で生活を楽しむ工夫が随所になされていますね。また、園の入口にはペルシア絨毯が敷かれ、本棚には数多くの本、地球儀などが置かれています。
溝口様:子どもの人格形成においては、文化的資本に触れ、それを身体で感じることが大切です。例えば、毎日、上質な絨毯を踏む感触や、本がたくさん並んだ本棚を目にすること。こうした環境は、子どもたちの五感を通して、記憶に刻み込まれていきます。
人間は、「今」という瞬間を生きているようでいて、その過去の記憶を基にして、絶えず未来を予測しながら生きています。例えば、お茶もコーヒーも飲んだことがない人に「お茶とコーヒー、どちらがいいですか?」と聞いても、選びようがないですよね。過去に経験したからこそ、「私はお茶がいい」という選択ができるようになるのです。
子どもたちも同様です。生きてきた年数が少ないため、過去の記憶も少ないのですが、それでも、今自分がいる環境を全身で感じ取り、それを内臓的な感覚として記憶しながら、未来を創造する力を身につけていきます。
だからこそ、子どもの育つ環境はとても重要です。豊かな文化的資本に触れられる環境をつくることが、子どもたちの人格形成の豊かな土台になると信じています。
「日本こども育成協議会」のご活動においても、溝口様は、子どもたちのために日々、尽力されていますね。当社もまた、衛生管理、主に検便をお手伝いさせていただいております。
溝口様:「日本こども育成協議会」は、東京都の認証保育制度の裏側で、行政の手が届かない部分を支えるために設立されました。当時、株式会社は既存の社会福祉法人主体の制度に参入できないという壁に直面しており、「ならば、自分たちで団体を作るしかない」との思いから、同協議会は生まれたのです。
初期の活動では、認可外保育所が多く抱えていた問題、例えば保険の引き受けや、高額だった検便などの衛生検査を解決する必要がありましたが、当園の理念をご理解いただける企業さんや、町田予防衛生研究所さんのご協力のおかげで、運営がスムーズにできています。町田予防衛生研究所さんをはじめとする、草創期の賛助会員の皆様には、文字通り協議会を一緒につくっていただいており、感謝の思いしかありません。
会長職については、正直に言いますと持ち出しも多く、「やめたい」と思うこともあります(苦笑)。しかしまだ、やめるつもりはありません。子どもの保育を担う協議会だからこそ、子どものことを知っている人間がいなければならないからです。今後も私は子どもの代弁者として、この活動を続けたいと考えています。
今後の展望をお聞かせください。
溝口様:私たちには今、二つの目標があります。一つは、日本の保育の現状について、広く知っていただくことです。日本の保育制度には、現状、株式会社が参入していますが、決してお金が儲かる仕事ではありません。今の日本の社会保障制度のなかで、株式会社もまた、日本の未来のために重要な保育を担っていることを、ご理解いただければと思います。
もう一つは、いまだ「保育に欠ける」子どもたちがいる現状を、多くの方に知っていただくことです。地方には、子どもにとって「いい環境とは言えない」と評価される保育所もあります。しかし、そこを頼らざるをえない親御さんがいることも事実です。国家が子どもの育成に費用をきちんと計上して、認可外が担ってきた保育の「質」を、しっかりと保証するような制度を、整備していかなければなりません。
子どもの育ちの場全体を、国全体で支援することの重要性を、これからも訴えていきたいと思います。

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