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消毒剤の基礎知識(1)消毒剤の分類

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消毒剤を用いて、各種の微生物を殺菌したり、不活化することは、感染症や食中毒の予防対策の基本の一つです。市場には、数多くの消毒剤が市販されていて、どの製品を選ぶべきなのか悩むことも少なくありません。また、消毒剤を正しく使用しなければ、その効果が期待できないこともあります。

今回は、消毒剤を選ぶときに参考になる基礎知識として、
①消毒剤の分類
②消毒、殺菌などの意味
についてお話します。

なお、後で述べるように「消毒」という言葉は、薬機法(正式名称は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)と呼ばれる法律において、決められた製品にしか使用することができません。

しかし、感染症や食中毒の予防対策として細菌、ウイルス、カビなどの微生物を制御(殺菌、除菌、抗菌、不活化等)するために使用される製品を総称する言葉として分かりやすいことから、「消毒」という言葉を使用させていただきます。厳密に薬機法上区別が必要な場合は、除菌等と記載します。

1. 消毒剤の分類~アルコール系消毒剤を例として

日常的に使用する消毒剤は、大きく、薬機法で承認を受けているものと、受けていないものに分けられます。薬機法で承認を受けているものは、消毒等のために人に対して使用できますが、受けていないものは人に対して使用することはできません。ここでは、最も一般的な消毒剤であるアルコール系消毒剤でみてみます(表1)。

(1)薬機法で承認を受けているもの

薬機法により承認されている消毒剤は大きく医薬品と医薬部外品に分けられ、医薬品はさらに医療用医薬品と一般用医薬品に分けられています。

医療用医薬品は「医師もしくは歯科医師によって使用されまたはこれらの者の処方せんもしくは指示によって使用されることを目的とした医薬品」をいい、一般用医薬品は「医療用医薬品として取り扱われる医薬品以外の医薬品」をいいます。

薬機法では、これらの区分ごとに品質、有効性、安全性を確保するための規定が定められています。あらゆる面において、最も厳格な審査を受けているものが医療用医薬品であり、次が一般用医薬品、審査が最も緩和なものが医薬部外品になります。

薬機法で承認を受けているアルコール系消毒剤は、医療用医薬品、一般用医薬品(第3類医薬品)、指定医薬部外品に分けられます。なお、ここではアルコールを消毒の有効成分とするものに限定してお話します。アルコール(エタノール)自体は塩化ベンザルコニウム等の他の殺菌剤を有効成分とする消毒剤の溶剤として使用される場合がありますが、ここでは触れていません。

消毒用エタノール(医療用医薬品)

医療用は医師が患者の治療として用いるもので、通常ドラッグストア等では目にすることはありません。医療用医薬品は最も審査が厳しく、有効性、安全性等が最も担保されています。エタノール濃度は76.9~81.4vol%(容量パーセント)です。

消毒用エタノール(一般用医薬品:第3類医薬品)

一般用医薬品に含まれるアルコール系消毒剤は、「消毒用エタノール」として表示されています。また、「第3類医薬品」との記載もあります。エタノール濃度は76.9~81.4vol%です。

手指消毒剤(エタノール製剤)

指定医薬部外品に含まれるアルコール系消毒剤は「手指消毒用」などと表示されています。また、「指定医薬部外品」との記載もあります。手指の消毒にしか使用することができません。エタノール濃度は76.9~81.4vol%です。

留意点:薬機法における分類と、表示や使用目的は、必ずしも同じではなく、医療用医薬品や一般用医薬品として承認を受けているものの中にも、「速乾性手指消毒剤」として表示されている製品もあります。また、エタノール濃度も基本的には76.9~81.4vol%ですが、そこに含まれないもの(例:72vol%)もあります。

薬機法上の分類、使用目的、アルコール濃度などを確認することが大切です。

 

(2)薬機法の承認を受けていないもの

薬機法の承認を受けていない製品は、雑品(雑用品)として扱われます。

食品添加物製剤

雑品の一部には、その成分が食品衛生法上の食品添加物に指定され、その基準に適合しているものだけで製造されているものがあります。これらは、「食品添加物製品」などと表示されています。この製品は、特に、食品製造業者において、食品の殺菌や食器や食品製造施設の環境表面の消毒に使用されています。

アルコール系消毒剤で食品添加物製剤として表示されているものは、含まれているアルコールが、いわゆるお酒の製造法である「発酵法」と呼ばれる方法で製造されている必要があります(一般的なアルコール系消毒剤は「合成法」で製造)。

食品添加物製剤には、アルコール濃度の表示義務がありますが、薬機法の表記(容量パーセント)ではなく、重量パーセント(wt%)で表示されていますので、注意してください。

いわゆる「雑品(雑貨品)」

その他の製品が、いわゆる「雑品(雑用品)」と呼ばれるもので、環境表面の消毒などに使用します。アルコール系消毒剤を含み、現在販売されている消毒剤は、この雑品に属するものが少なくありません。アルコール濃度の表示義務はなく、その濃度の範囲も決まっていません。

高濃度エタノール製品

新型コロナウイルスの感染拡大に伴いアルコール系消毒剤が不足したことを受け、厚生労働省は手指消毒用エタノールの代替えとして「高濃度エタノール製品」の販売を許可しました(参考文献1)。この通知に基づいて販売されているものは「高濃度エタノール製品」などと表示されています。この製品も人体に対しては手指の消毒のみに使用することができ、「手指消毒に用いる際は、使用者の責任において使用すること」とされています。ただし、現在はアルコール系消毒剤は十分に供給されていることから、市場で見る機会は多くないかも知れません。

無水エタノールとエタノール

ドラッグストアには「無水エタノール」や単に「エタノール」と表示されているアルコール製品が置いてあることもあります。前者はエタノール濃度が99.5vol%以上、後者は95.1~96.9vol%のものです。無水エタノールは、水分をほぼ含まない純度の高いエタノールで、すぐに蒸発するため、水拭きができない電気製品などの掃除に使われます。消毒効果も一般の消毒用アルコールと比較して弱く、環境の消毒用として使用する場合は70~80%に希釈する必要があります。

 

表1 アルコール(エタノール)系消毒剤の分類
区分 薬機法による承認が必要 その他
分類 医薬品  指定医薬部外品 食品添加物製剤 雑品 高濃度エタノール製品*2
医療用 一般用(第3類医薬品*1) 新指定医薬部外品
主な用途 医療機関で使用手指・皮膚の消毒
器具(金属・非金属)の消毒
広く使用
手指・皮膚の洗浄消毒
食品の除菌、食品取扱施設の環境や器具の表面の除菌 環境や器具の表面の除菌 手指消毒
一般的な表示 消毒剤エタノール 手指消毒剤(エタノール製剤) アルコール製剤(発酵法で製造) アルコール除菌 高濃度エタノール製品
アルコール濃度*3 76.9~81.4vol% 製品による(wt%で表示) 製品による 60~83vol%

*1:アルコールを消毒の有効成分とするもの
*2:新型コロナウイルス対応のため厚生労働省が手指消毒用として認めた製造法で製造されたもの(「参考文献1」参照」
*3:エタノール濃度が67.7vol%(60wt%)以上のものは、消防法において危険物第4類アルコール類に分類され、火気厳禁の上、保管量等の制限を受ける(67.7vol%(60wt%)未満のものは非危険物となる)。

 

2. 消毒、殺菌、除菌、不活化の違い

消毒剤売り場に行くと、消毒、殺菌、除菌などといった言葉が目につきます。これらにどのような違いがあるのか説明します。

消毒

細菌やウイルスなどの病原性微生物を減らしたり、感染力を失くし、無毒化することを意味します。「殺菌」などと異なり、細菌やウイルスなどを必ずしも死滅させる必要はなく、存在していたとしても、微生物が病原性を示さなければ(人体に悪影響を及ぼさない)「消毒」になります。

「消毒」という言葉は、薬機法に基づき、その効果が認められ、承認を受けた医薬品や医薬部外品にしか表示することができません。最もよく見かけるものに、消毒用アルコール(第3類医薬品)があります。

殺菌

「消毒」と同じように薬機法で効果が認められた医薬品や医薬部外品のみでしか表示できません。殺菌の意味は「細菌などの微生物を殺すこと」です。ただし、対象とする微生物の種類や殺菌力に決まりはありません。たとえ一種類の微生物にしか殺菌力ががなくても、特定の菌をある程度殺すことができれば「殺菌」を表示することができます。

除菌

細菌などの微生物を取り除くことです。どのような製品にも使用することができますが、医薬品・医薬部外品では「殺菌」が使用されるため、それら以外の、いわゆる「雑品(雑貨品)」として扱われる製品によく使用されています。除菌も殺菌と同様に、取り除く微生物の種類や程度について決まりはありません。

抗菌

細菌などの微生物の増殖を抑えることです。「殺菌」や「除菌」のように微生物を殺したり、取り除く効果はありません。キッチン用品やトイレ用品、衣類、環境素材などでよく使われます。

不活化

ノロウイルスやインフルエンザウイルスなど、ウイルスの感染力を失わせることを意味します。ドラッグストアなどで目にすることは少ないかと思います。

以上、簡単によく使われる言葉を説明しましたが、それでもそれらの違いは分かりにくいと思います。知っておいていただきたいことは以下の通りです。

①殺菌と除菌の言葉自体に微生物をやっつける力(消毒効果)に優劣はなく、表示できる製品の違いです。消毒効果は、個別の製品ごとに異なります。

②ウイルスに対しても、殺菌や除菌という言葉が使われることがあります。一方、ウイルスに限定して有効性を示す場合、不活化を用いることが多いです。また、殺ウイルス、抗ウイルスなどと用いられることもありますが、それぞれ細菌に対する「殺菌」、「抗菌」の同じ意味で使用されています。

滅菌

日用品等にはあまり見かけませんが、微生物の消毒において重要な言葉として「滅菌」があります。「滅菌」とは、病原性の有無を問わずすべての微生物を死滅させるか、除去することで、高圧滅菌器やガス滅菌器などの専用の装置を用いて、医療用や微生物の実験用の器具を無菌化する場合などに使われる言葉です。

日本薬局方では「微生物の生存する確率が 100万分の1以下になること」と定義されています。

なお、「商業的無菌」という言葉がありますが、これは「加熱処理により、公衆衛生上有害な微生物および通常の非冷蔵貯蔵・流通条件下で食品に発育しうる公衆衛生上無害なすべての微生物を死滅させた状態」と定義されています。

表 消毒剤に使用される言葉の違い
単語 意味  備考
消毒 病原性微生物の感染力を失うなどして、無毒化すること 薬機法で承認を受けた製品のみに使用される
殺菌 菌を殺すこと
除菌 菌の数を減らし、清浄度を高めること 主に雑品(雑貨品)に使用される
抗菌 菌の増殖を抑えること
不活化 ウイルスの感染力を失わすこと ウイルスに対して使用
滅菌 すべての微生物を死滅させるか、除去すること 医療や微生物の実験に使用

 

参考文献

1.新型コロナウイルス感染症の発生に伴う薬局等での高濃度エタノール製品の取扱いについて」(令和2年4月 16 日付け医薬・生活衛生局医薬品総務課、監視指導・麻薬対策課及び医薬品審査管理課連名事務連絡、その後一部改正)

著者

野田衛先生

野田 衛先生

麻布大学 客員教授
国立医薬品食品衛生研究所 客員研究員
公益社団法人日本食品衛生協会 学術顧問
株式会社町田予防衛生研究所 顧問


<略歴>
1981.3:日本獣医畜産大学獣医畜産学部獣医学科卒
1981.4~1982.3:農林省動物検疫所
1982.4~2006.12:広島市役所(衛生研究所等)
2007.1~2018.3:国立医薬品食品衛生研究所・食品衛生管理部・第四室長

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