黄色ブドウ球菌食中毒の症状や特徴、予防方法について

黄色ブドウ球菌食中毒の症状や特徴、予防方法について
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は食中毒菌の一種で、過去には大手乳業メーカーによる大規模な食中毒事故の原因となったことでも有名です。今回はこの黄色ブドウ球菌を中心にその特徴と食中毒予防対策についてご説明します。
※2020年7月14日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2022年10月7日に再度公開しました。
食中毒予防の三原則についてはこちら
>>食中毒予防の三原則「つけない」「ふやさない」「やっつける」とはのページへ
▼調理現場ですぐに使える学べる資料▼
1. 黄色ブドウ球菌の特徴
黄色ブドウ球菌は牛、豚等の家畜、鳥類のみに限らず、私たちの体にも生息しています。健常な人間の鼻腔、咽頭、腸管、また傷口等に生息しており、黄色ブドウ球菌の保菌率は、平成23年に食品安全委員会が作成したファクトシートでは約40%とされています(食品安全委員会ファクトシート ブドウ球菌食中毒)。顕微鏡で見ると、ぶどうの房のように連なった球菌(ぶどう球菌)の一種で、食品の上でも増殖しますが、その際に産生する毒素(エンテロトキシン)が食中毒の原因となります。産生された毒素は耐熱性が高く、食品の上で一旦産生されると通常の加熱では分解されません。また、黄色ブドウ球菌は比較的高い食塩濃度でも増殖し、毒素を産生するため、例えば塩にぎりや自家製の漬物などでも注意が必要です。

黄色ブドウ球菌の電子顕微鏡写真
出典:内閣府ホームページ (https://www.fsc.go.jp/sozaishyuu/shokuchuudoku_kenbikyou.html)
黄色ブドウ球菌の検査をして、リスクを見える化しましょう。
>>食品微生物検査のページへ
当社をご利用いただいているお客様の声をご紹介します。
>>お客様の声のページへ
【黄色ブドウ球菌食中毒の症状】
潜伏期間が比較的短く、食後30分~6 時間程度で、悪心、嘔吐、下痢などの症状がみられます。黄色ブドウ球菌による食中毒では悪心・嘔吐は必発症状で、嘔吐回数は摂食した毒素量により異なります。
通常、24時間以内に改善し、特別な治療は不要とされていますが、脱水症状や血圧の低下、脈拍微弱などを伴った症状により重症化する場合もあります。
【黄色ブドウ球菌食中毒の発生時期】
厚生労働省による、ぶどう球菌(黄色ブドウ球菌を主に含む)の過去5年間の統計データをみると7月、8月に多く発生しています。細菌が増殖する高湿度・高温の条件がそろう、6月から10月にかけては、特に注意をしましょう。

厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2017年~2021年のデータを基に作成
【黄色ブドウ球菌食中毒の発生場所】
過去5年間のデータ110件中57件と、ぶどう球菌による食中毒発生場所の約半数が飲食店で発生しています。次いで製造所(12件)、仕出屋(10件)と続きます。年間を通し食事の提供量が多い飲食店は常に食中毒と隣り合わせのため、日ごろから細心の注意が必要です。
東京都からも、既に飲食店営業を取得しているお店がテイクアウトや宅配(出前)を始める場合に必要な衛生管理について注意喚起がなされていますが、テイクアウトや宅配された弁当等により発生した食中毒事例 として、「調理従事者の手指を介した黄色ブドウ球菌食中毒」が挙げられています。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kyoka/takeout_fp.html
テイクアウトや宅配(出前)での食中毒予防に関しては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
>>テイクアウトやデリバリー販売での食中毒に注意しましょう!のページへ
>>弁当による食中毒についてのページへ

厚生労働省「過去の食中毒事件一覧」2017年~2021年のデータを基に作成
【黄色ブドウ球菌食中毒の原因食品等】
過去5年間のデータを見ると、ぶどう球菌による食中毒の原因食材は様々ですが、おにぎりやお寿司等を喫食することで食中毒につながった例が多いようです。手指に傷がある状態で、素手で調理を行うことで、ぶどう球菌が付着し、そのぶどう球菌が食品上で増殖、毒素を産生した可能性があります。
食材や食品の汚染状況の確認には食品微生物検査がおすすめです。
2. 黄色ブドウ球菌食中毒の予防方法
食中毒予防の基礎に関してはこちらをご覧ください。
>>食中毒と食中毒予防についてのページへ
黄色ブドウ球菌の産生する毒素は通常の加熱では分解されないため、食材に如何に菌を付けないか、如何に増殖を抑えるかが重要になります。
具体的には次の3つのポイントが重要です。①「手洗い、消毒、手袋の着用を実施する」②「食材を適切な温度で管理する」③「調理時に十分な加熱をする」
①「手洗い、消毒、手袋の着用を実施する」
食材に黄色ブドウ球菌の付着を防ぐには手洗い、アルコールによる消毒が効果的です。また、手や指に傷がある際に使い捨ての手袋(ビニール、樹脂性等)を使用することで菌の付着を防ぐことができます。
手洗いやその後の消毒が正しくできているかを確認するためには、手指の拭き取り検査がおすすめです。
>>環境衛生検査のページへ
②「食材を適切な温度で管理する」
黄色ブドウ球菌は10℃以下の環境においてほとんど増殖できないといわれています。食材は出しっぱなしにせず、10℃以下の冷蔵庫等でしっかりと保管しましょう。
③「調理時に十分な加熱をする」
最も重要なのは黄色ブドウ球菌を付着させないことですが、調理時に加熱が不十分な場合、その菌が増殖し、毒素を産生する可能性もあるため食材の中心温度75℃で1分以上の加熱を忘れずに実施しましょう。
加熱による殺菌がなされたかは食品微生物検査で確認しましょう!
衛生管理レベルの高い現場の共通点についてはこちらをご覧ください。
>>衛生管理レベルの高い現場の共通点のページへ
HACCP制度化対応はお済みですか?
>>HACCP制度化対応に関するよくある質問のページへ
>>HACCP制度化対応に失敗しないためのポイントのページへ
検査等の料金やご相談はお気軽に
検査等の料金が知りたい方はこちら
検査等の料金が知りたい方はこちらからどうぞ。
ご質問やお問い合わせはこちら
ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。
3. まとめ
・特徴:家畜、鳥類に限らず、人間の鼻腔、咽頭、腸管、傷口等に生息しており、黄色ブドウ球菌が産生する毒素は、通常の加熱で分解することが難しい。食塩濃度が比較的高くても増殖し、毒素の産生が可能であるため注意が必要である。
・症状:潜伏期間が短く食後30分~6 時間程度で、悪心、嘔吐、下痢などの症状がみられる。特別な治療は不要とされているが、脱水症状や血圧の低下、脈拍微弱などを伴った症状により重症化する場合もある。
・発生時期:過去5年間で特に7月と8月に多く、高温多湿の夏場は注意が必要である。
・発生場所:約5割が飲食店で起こっている。
・原因食材:おにぎりや寿司等直接手でふれて調理を行うものが原因となりやすい。
・対策:調理時の手洗い、消毒、手袋の着用を実施する、食材を適切な温度で管理する、調理時に
十分な加熱をすることが重要である。
>>食中毒と食中毒予防についてのページへ
食中毒予防のための品質管理全般に関するお悩みはこれで解決!
>>品質管理コンサルティングのページへ
食中毒がどのくらい起こっているのかを知るには
>>事件数が多い食中毒ランキングのページへ
>>患者数が多い食中毒ランキングのページへ
>>死者数が多い食中毒ランキングのページへ
>>食中毒の発生状況を総まとめのページへ
当社をご利用いただいているお客様の声をご紹介します。
>>お客様の声のページへ
LINE公式アカウントを友だち追加!!
町田予防衛生研究所では、食の安全に興味・関心をお持ちの方々に、有用な情報を発信しています。
食品に携わる方々が、「好きな時間に」「簡単に」「短時間で」食の安全・安心に関する知識を得るられることを目指して運営しています。
電車での移動中などのスキマ時間にご利用いただけるように、ぜひ【友だち追加】をしてください。
【町田予防衛生研究所】食品衛生ハンドブックのダウンロードページへ
FAQ
- 黄色ブドウ球菌の特徴は?
- 黄色ブドウ球菌は牛、豚等の家畜、鳥類のみに限らず、私たちの体にも生息しています。健常な人間の鼻腔、咽頭、腸管、また傷口等に生息しており、黄色ブドウ球菌の保菌率は、平成23年に食品安全委員会が作成したファクトシートでは約40%とされています(食品安全委員会ファクトシート ブドウ球菌食中毒)。顕微鏡で見ると、ぶどうの房のように連なった球菌(ぶどう球菌)の一種で、食品の上でも増殖しますが、その際に産生する毒素(エンテロトキシン)が食中毒の原因となります。産生された毒素は耐熱性が高く、食品の上で一旦産生されると通常の加熱では分解されません。また、黄色ブドウ球菌は比較的高い食塩濃度でも増殖し、毒素を産生するため、例えば塩にぎりや自家製の漬物などでも注意が必要です。
- 黄色ブドウ球菌食中毒の症状は?
- 黄色ブドウ球菌食中毒は、潜伏期間が比較的短く、食後30分~6 時間程度で、悪心、嘔吐、下痢などの症状がみられます。黄色ブドウ球菌による食中毒では悪心・嘔吐は必発症状で、嘔吐回数は摂食した毒素量により異なります。通常、24時間以内に改善し、特別な治療は不要とされていますが、脱水症状や血圧の低下、脈拍微弱などを伴った症状により重症化する場合もあります。
- 黄色ブドウ球菌食中毒の予防方法は?
- 食中毒予防の基礎に関してはこちらをご覧ください。
>>食中毒と食中毒予防についてのページへ具体的な黄色ブドウ球菌食中毒の予防方法としては、主に3つのポイントがあります。
①「手洗い、消毒、手袋の着用を実施する」②「食材を適切な温度で管理する」③「調理時に十分な加熱をする」
こちらもオススメ
近年の食中毒原因上位>>カンピロバクター食中毒の症状や特徴、予防方法について
冬場に特に多い食中毒
>>ノロウイルス食中毒の症状や特徴、予防方法について
O157は特に有名 ベロ毒素を産生する大腸菌
>>O157等の腸管出血性大腸菌食中毒の症状や特徴、予防方法について
家禽類や家畜などの体内に生息 乾燥に強い食中毒菌
>>サルモネラ食中毒の症状や特徴、予防方法について
海水中に存在して魚介類に付着
>>腸炎ビブリオ食中毒の症状や特徴、予防方法について
Written by
株式会社町田予防衛生研究所
町田予防衛生研究所は、食の安全に関わる各種検査やコンサルティングなど幅広く商品・サービスを取り揃え、ワンストップで食の安全をサポートする企業です。
本社所在地
〒194-0013
東京都町田市原町田3-9-9
許可等
- 厚生労働省登録検査機関(食品衛生法)
- 登録衛生検査所
- 国際規格 [ISO9001] 認証取得
- 国際規格 [ISO/IEC17025:2017] 認定取得(♯81094)
- 国際規格 [ISO/IEC 27001:2013] 認証取得
- JFS監査および適合証明プログラムに基づく監査会社
参考
・厚生労働省 4.食中毒統計資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html
・食品安全委員会 ファクトシート ブドウ球菌食中毒 (Staphylococcal foodborne poisoning)
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/09staphylococcal.pdf
・国立感染症研究会 ブドウ球菌食中毒とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/component/content/article/392-encyclopedia/511-aureus.html
食品衛生のお役立ち掲示物ダウンロード
現場ですぐに使える「食品衛生のお役立ち掲示物」をご用意しております。
ダウンロードして印刷すれば、すぐにご利用いただけます。