食中毒と食中毒予防について
食中毒と食中毒予防について
食中毒とは、食中毒を起こすもととなる細菌やウイルス、有毒な物質がついた食べ物を食べることによって、下痢や腹痛、発熱、吐き気などの症状が出る病気のことです。食中毒の原因によって、病気の症状や食べてから病気になるまでの時間はさまざまです。時には命にもかかわるとてもこわい病気です(農林水産省 食中毒の原因と種類)。今回は、この細菌性食中毒とウイルス性食中毒についてとそれぞれの基礎的な予防対策をまとめましたので最後までぜひご覧ください
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1. 細菌性食中毒について
食中毒菌が増える条件
細菌が増えるには、栄養・水分・温度の3つの条件が必要であり、この他にも酸素の有無や水素イオン濃度(pH)、塩分濃度などが影響しています。食中毒の原因となる食中毒菌も、それぞれの菌で最適なこれらの条件があります。これらの条件を把握し、コントロールすることで食中毒菌の増殖を抑え、食中毒を防ぐことができます。例えば、多くの細菌は20~50℃で活発に増殖しますが、10℃以下では非常に遅くなります。食品を“速やかに冷やしましょう。低温で保管しましょう”といわれるのはこのためです。
細菌性食中毒の分類
感染型食中毒
食中毒菌が付着した食品を食べることにより、腸管内で食中毒菌が増殖して起こる食中毒。
代表的な食中毒菌
・サルモネラ属菌
>>サルモネラ食中毒の症状や特徴、予防方法について
・腸炎ビブリオ
>>腸炎ビブリオ食中毒の症状や特徴、予防方法について
・カンピロバクター属菌
>>カンピロバクター食中毒の症状や特徴、予防方法について
生体内毒素型食中毒
食中毒菌が付着した食品を食べることにより、腸管内で食中毒菌が増殖し、この際に産生する毒素で起こる食中毒。
代表的な食中毒菌
腸管出血性大腸菌
>>O157等の腸管出血性大腸菌食中毒の症状や特徴、予防方法について
ウエルシュ菌
>>ウエルシュ菌食中毒の症状や特徴、予防方法について
セレウス菌(下痢型)
>>セレウス菌食中毒の症状と特徴、予防方法について
「毒素型食中毒」
食品中で大量に増殖した食中毒菌が毒素を作り、その食品を食べることで起こる食中毒。
代表的な食中毒菌
黄色ブドウ球菌
>>黄色ブドウ球菌食中毒の症状や特徴、予防方法について
ボツリヌス菌
>>ボツリヌス菌食中毒の症状や特徴、予防方法について
セレウス菌(嘔吐型)
>>セレウス菌食中毒の症状と特徴、予防方法について
芽胞菌について
芽胞菌は、生育環境が増殖に適さなくなると菌体内に芽胞と呼ばれる殻のようなもの作る菌です。芽胞は加熱や乾燥等の過酷な条件に対して強い抵抗性を持ちます。このため通常の加熱調理では死滅させることができません。また、発育に適した環境になると、本来の形である栄養細胞となって再び増殖します。
代表的な食中毒菌
ウエルシュ菌
>>ウエルシュ菌食中毒の症状や特徴、予防方法について
セレウス菌
>>セレウス菌食中毒の症状と特徴、予防方法について
ボツリヌス菌
>>ボツリヌス菌食中毒の症状や特徴、予防方法について
2. 細菌性食中毒予防の三原則
細菌性食中毒予防の三原則は「つけない」「ふやさない」「やっつける」です。
「つけない」
【人】【食材や食品】【環境】の管理の観点からポイントをお伝えします。
【人】
人の管理で一番重要なことは“手洗い”です。人の手を介して食中毒菌で汚染してしまうことがあります。ではどのようなタイミングで手洗いをするかですが、これに関しては、「手洗いのタイミング - When to Wash -」の記事をご覧ください。また、手の洗い方に関しては、当社では「食品衛生のお役立ち掲示物」をご用意しておりますので、こちらを利用して従業員の方、全員が正しく手洗いできるようにようにしましょう。手洗いに加えて、使い捨て手袋を適切に利用することも重要です。
特に、手や指に傷がある際に使い捨ての手袋(ビニール、樹脂性等)を使用することで食材に黄色ブドウ球菌の付着を防ぐができます。
黄色ブドウ球菌食中毒に関しては
>>黄色ブドウ球菌食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
手洗いが正しく行われているかは、手指の拭き取り検査で確かめることができます。
>>環境衛生検査のページへ
この他、従業員の定期的な健康チェックも必要です。従業員が食中毒菌に感染していた場合、その方の糞便から手、そこから直接的または調理器具などを介した間接的に食品を汚染させてしまう可能性があります。特に健康不良を訴えない健康保菌者(症状は無い、または軽症であるが体内に食中毒菌を保有している人を指す)の存在もあることから、定期的に検便を行いましょう。
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【食材や食品】
食材によっては、例えば野菜のように土や泥がついており、腸管出血性大腸菌やウエルシュ菌などの汚染の恐れがあるものもあります。しっかりと汚れを洗浄し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等で消毒をするなどにより、食中毒菌を除去・低減する工程はとても重要です。特に加熱による殺菌工程がない食品では洗浄と消毒の工程が重要です。未加熱野菜による食中毒事故に関しては、関連記事「未加熱の野菜による食中毒事故について」をご覧ください。
また、調理済み食品が食材から汚染を受けないようにする対策(エリア分け・動線の整備等の区分け、定置管理、覆い掛けして保管するなど)も重要です。
洗浄や消毒が正しく行われているか、保管時に食中毒菌が増えていないかは「食品微生物検査」で確認しましょう。
【環境】
ドアや窓、換気設備の開口部、調理や保管設備、調理器具などからの汚染にも気をつけなければなりません。食中毒菌は目には見えませんので、一見清潔そうな調理場に見えても食中毒菌で汚染されている可能性があります。設備の管理ルールの周知と徹底や、設備や器具は洗浄と消毒により衛生的な取り扱うことと共に、”使い分け”が重要です。特に調理器具は原材料用や調理済み品用等、用途ごとに分けて使いましょう。これにより食材間での交差汚染を予防することができます。衛生的な環境で調理できているかは、汚染状況が見える化できる「環境衛生検査」をおすすめします。これによりどこが(何が)汚染度合いが高いかがわかり、対策が立てやすくなります。この他、防虫防鼠も適宜実施しましょう。
「ふやさない」
食中毒菌を増やさないためには「温度管理」と「保管時間を短く」することが重要です。食中毒菌を含む細菌にはそれぞれ増殖に適した温度域があります。20~50℃がそれにあたります。このため、この温度帯を避け、細菌の増殖スピードが抑えられる低温か、死滅が始まる高温帯で保管することで、細菌の増殖を抑制することができます。冷たいまま提供する食品の場合には、一般的に食中毒菌は最低発育温度が5℃くらいのものが多とされており、極力低温で管理しましょう。温かいまま提供する食品の場合には、65℃以上で保温しましょう。また、保管時間に関しても極力短時間で提供できるように心がけましょう。
調理後に流通させる食品に関しては、科学的根拠をもって期限設定をする必要があります。このためには、食品微生物検査により細菌の増殖を抑えられる期間を把握し、それに官能検査などの結果を考慮して合理的に設定しましょう。
「やっつける」
やっつけるとは、食中毒菌を殺菌・消毒することです。食中毒菌の殺菌・消毒において、加熱できる食材や食品の場合には、芽胞菌を除き、中心温度75℃で1分間の加熱が有効とされています(ノロウイルスに関しては後述)。芽胞菌に関しては加熱調理でやっつけることが困難であるため「ふやさない」の対策が重要です。各々設定した条件において殺菌・消毒が正しくなされたかを確認するためには、「食品微生物検査」で確認しましょう。
3. ウイルス性食中毒について
食中毒を起こすウイルスには、ノロウイルスやA型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスなどがあります。この中でもノロウイルスは毎年多くの事故が発生しております。ウイルスは宿主細胞を利用して増殖し、食品中で増えることはないため、食中毒対策も異なってきます。
ノロウイルスについて
ノロウイルスは感染力が強く、集団感染のリスクの高いウイルスです。カキなどの二枚貝の喫食による食中毒が有名ですが、不顕性感染者(感染しているが症状がないまたは軽症)を含む感染者の手指などを介して食材が二次汚染され、食中毒事故が発生しており、十分に気を付けなければなりません。
ノロウイルスの食中毒に関しては
>>関連記事「ノロウイルス食中毒の症状や特徴、予防方法について」をご覧ください。
4. ノロウイルス食中毒予防の四原則
細菌性食中毒予防では「つけない」「ふやさない」「やっつける」でしたが、ノロウイルスは食品中では増殖しないため「ふやさない」が当てはまりません。また、「やっつける」に関しても条件が異なります。
ノロウイルス食中毒予防の四原則は「持ち込まない」「つけない」「やっつける」「拡げない」です。
当社では、従業員教育用にダウンロードしてすぐに利用できる”ノロウイルス食中毒予防の4原則”の掲示物もご用意しております。ぜひご利用ください。
「持ち込まない」
ノロウイルス感染者の中には不顕性感染者(症状は無いまたは軽症であるが、感染しており体内にウイルスを保有している人を指す)がいます。ノロウイルス食中毒を予防するためには感染者から食材や食品を汚染しないように調理作業に携わらせないことが重要です。ノロウイルス感染者特に不顕性感染者を発見するためには定期的なノロウイルス検便が有効です。
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>>ノロウイルス検便のページへ
「つけない」
細菌性食中毒予防と同様のため、そちらをご覧ください。
「やっつける」
細菌性食中毒予防のためには、中心温度75℃で1分と前述しましたが、ノロウイルスを不活化するためには、食材または食品の中心温度85℃~90℃、90秒以上の加熱が必要です。
調理器具なども十分に洗浄した後に、熱湯(85℃以上)で加熱するか、塩素消毒液(塩素濃度200ppm)に浸して消毒しましょう。
調理器具などが正しく消毒できているかは「環境衛生検査」で確認することができます。
「拡げない」
ノロウイルスは感染力が強いウイルスです。ノロウイルスが身近で発生したときには、ノロウイルスの感染を広げないために調理環境や共用部分(手すりやドアノブなど)などの消毒を徹底することや、おう吐物などの処理の際に二次感染しないように対策をすることが重要です。
ノロウイルスによる環境への汚染状況を見える化するには「環境衛生検査」をおすすめします。
5. 食品の安全を確認するには
食品の安全を脅かす危害は、「生物学的危害」「物理的危害」「化学的危害」の3つに分類されます。
なかでも主に微生物を原因とする「生物学的危害」は、実際に発生した飲食関連の事故のうち約9割を占めるといわれています。
目には見えない微生物を検査によって「見える化」し、その状態を把握することが、微生物のコントロールには必須です。
食品微生物検査では、食品の種類・製造工程・保存条件など、検査対象の状況とその目的に応じて、衛生指標菌検査と食中毒菌検査を組み合わせて行われます。
その結果から、食中毒予防やリスク低減につなげることが可能です。
また、専門機関で検査することで、検査結果から改善のアドバイスが受けられます。より安心して食品をお客様に提供しましょう。
>>食品微生物検査のページへ
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Written by
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参考
・厚生労働省 食中毒
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html
・農林水産省 食中毒の原因と種類
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/featured/afp1.html
・食品安全員会 役に立つ食中毒の知識
https://www.fsc.go.jp/monitor/moni_26/moni26-shiryo1-2-tokyo1.pdf
・農林水産省 食中毒ってなあに
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/training/pdf/081225a.pdf
・食品安全員会 ウェルシュ菌食中毒、セレウス菌食中毒のファクトシートをご紹介します。
https://www.fsc.go.jp/sonota/kikansi/29gou/29gou_3.pdf
・政府広報オンライン 冬はノロウイルスにご注意
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201811/3.html
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