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ウエルシュ菌食中毒の症状や特徴、予防方法について

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ウエルシュ菌食中毒の症状や特徴、予防方法について

ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)による食中毒は、別名「給食病」とも呼ばれ、カレーや煮込み料理等、大鍋・大釜で大量に調理し、作り置かれていた食品を原因とした事故発生例の多い食中毒となります。1件当たりの患者数が多いことも特徴です。給食だけでなく、今までオーダー毎に調理していた飲食店で、お弁当用に一度に大量に調理し、作り置く場合は特に注意が必要です。ウエルシュ菌による食中毒を適切に予防して食中毒事故を防ぎましょう。

※2020年7月16日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年10月16日に再度公開しました。

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1. ウエルシュ菌の特徴

ウエルシュ菌は、ヒトや動物の大腸内常在菌で、下水、河川、土壌等、自然界にも広く分布しています。

食中毒の原因となるウエルシュ菌は、100℃で1~6時間の加熱にも耐える熱に強い芽胞を作り、大鍋・大釜での加熱調理の際でもなかなか死滅しません。また、ウエルシュ菌は偏性嫌気性菌(酸素がない、もしくはとても少ない状況で増殖する菌)で、加熱調理により他の細菌が死滅し、且つ、空気(酸素)が抜けた状態の大鍋・大釜の中は、増殖に適した環境となります。そして、作り置き等で増殖に適した温度帯(12~50℃、至適温度:43~45℃)に長く置かれると、食品中で発芽(芽胞から再び増殖できる栄養型となること)し、急速に増殖します。

ウエルシュ菌の食中毒は、菌の産生する毒素(エンテロトキシン)により引き起こされます。ウエルシュ菌には毒素を産生せず、食中毒の原因とならない菌も存在しますが、この毒素を産生するウエルシュ菌(エンテロトキシン産生性ウエルシュ菌(下痢原性ウエルシュ菌))が食品中で大量に増殖し、その食品を食べることで腸管内に感染、芽胞を形成する際に毒素を産生し、放出された毒素により食中毒の症状を起こす感染型食中毒です。

ウエルシュ菌の毒素自体は熱や酸で比較的容易に不活性化されます。また、ウエルシュ菌の食中毒は大量に菌が増殖した食品の喫食により引き起こされるため、十分な加熱(栄養型の殺菌、毒素の不活化)だけでなく、加熱調理後の温度管理(加熱調理後の速やかな喫食・冷却、小分け等)で菌の増殖を抑えることが食中毒予防対策として重要になります。


電子顕微鏡写真

ウエルシュ菌の電子顕微鏡写真
出典:内閣府ホームページ (https://www.fsc.go.jp/sozaishyuu/shokuchuudoku_kenbikyou.html)

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【ウエルシュ菌食中毒の症状】

潜伏期間6~18 時間(平均 10 時間)の後、腹痛や下痢等の症状を起こします。発熱や嘔吐はほとんどみられません。多くの場合、発症後 1~2 日で回復するとされていますが、基礎疾患のある方や子供、高齢者の方は重症化することがあります。


【ウエルシュ菌食中毒の発生時期】

過去5年間の統計データでみると5月に最も多く発生していますが、他の細菌性食中毒と比較すると、夏場に特に集中するのではなく年間通じて発生していることが特徴です。

ウエルシュ菌食中毒事故発生件数グラフ

厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2018年~2022年のデータを基に作成



【ウエルシュ菌食中毒の発生場所】

過去5年間で129件中38件と約3割が飲食店を発生場所としています。次いで老人ホーム(29件)、仕出屋(19件)、学校(18件)と続きます。原因食材等の項目で詳細を後述しますが、大量調理を行う施設ではウエルシュ菌が増殖する条件がそろい、特に注意が必要です。

過去5年間のウエルシュ菌による食中毒発生場所グラフ

厚生労働省「過去の食中毒事件一覧」2018年~2022年のデータを基に作成



 

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【原因食品等】

ウエルシュ菌による食中毒の原因食材はさまざまですが、カレーやシチュー、ビュッフェ形式等の作り置きされた食材を喫食することで多く発生しています。

大量調理を行う給食施設等では、大鍋・大釜で前日に調理して、そのまま室温で放冷する等、食中毒事故の発生条件が揃う状況が起きやすく注意が必要です。また、お弁当用に一度に大量に調理し、前日に作り置く場合等も注意が必要です。

ウエルシュ菌は自然界に広く分布していることから、原材料からの混入を防ぎきることが難しい食中毒菌であることも留意しましょう。

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2. ウエルシュ菌食中毒の予防方法

食中毒予防の基礎に関してはこちらをご覧ください。
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ウエルシュ菌は自然界に広く存在しているため、ウエルシュ菌の食材の汚染を防ぐことは難しく、加熱により芽胞を形成したウエルシュ菌を死滅させることも難しいため、“いかに菌の増殖を抑制するか”が重要なポイントとなります。

具体的には次の4つのポイントが重要です。①「喫食までの時間を短くする」②「加熱調理後に速やかに10℃以下に冷却するか、55℃以上で保管する」③「よく混ぜながら調理する」④「調理後の食材は小分けにして保存する」

 

①「喫食までの時間を短くする」

前日調理は避け、加熱調理したものは喫食までの時間をなるべく短くする工夫をしましょう。

②「加熱調理後に速やかに10℃以下に冷却するか、55℃以上で保管する」

耐熱性のウエルシュ菌は芽胞を形成して生き残り、加熱調理後50℃程度にまで下がると芽胞が発芽を始め、43~45℃になると最もよく増殖するため、20℃から50℃の温度域を速やかに通過させ、10℃以下に冷却することが望まれます。また、冷却できない場合には55℃以上で保管しましょう。これにより菌の増殖を抑制できます。

③「よく混ぜながら調理する」

よくかき混ぜながら調理を行うことで空気との接触を増やすことができ、菌の増殖を抑制できます。

④「調理後の食材は小分けにして保存する」

食材を小分けに保管することで食材に酸素がいきわたりやすくなり、菌の増殖を抑制できます。中心部まで素早く冷却することもできます。

 



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3. まとめ

・特徴:ヒトや動物の大腸内常在菌(いわゆる悪玉菌)で、自然界に広く分布している。食中毒の原因となるウエルシュ菌は、100℃で1時間の加熱にも耐える熱に強い芽胞を作り、大鍋・大釜での加熱調理の際に死滅しない。嫌気性菌で広範囲の温度域(12~50℃・至適温度:43~45℃)で増殖する。ウエルシュ菌の食中毒は、多くの菌量が必要であり、菌の産生する毒素(エンテロトキシン)により引き起こされる。

・症状:潜伏期間6~18時間(平均10時間)の後、腹痛や下痢等の症状を起こし発熱や嘔吐はほとんどない。多くの場合、発症後 1~2 日で回復するが、基礎疾患のある方や子供、高齢者の方は重症化することがある。

・発生時期: 過去5年間では5月に多いが冬場にも発生し年間を通して注意が必要である。

・発生場所: 飲食店、事業場(給食施設等)など大量調理を行う現場に多い。

・原因食材:カレーやシチュー、ビュッフェでの食事等、大鍋・大釜等による大量調理する料理に起きやすい。

・対策:ウエルシュ菌の食中毒は、多くの菌量が必要であり、芽胞を形成すると通常の加熱調理で死滅しないため、重要ポイントは、菌の増殖を抑制すること。

4つのポイント

①「喫食までの時間を短くする」②「加熱調理後に速やかに10℃以下に冷却するか、55℃以上で保管する」③「よく混ぜながら調理する」④「調理後の食材は小分けにして保存する」

 
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FAQ

ウエルシュ菌の特徴は?
ウエルシュ菌は、100℃で1~6時間の加熱にも耐える熱に強い芽胞を作り、大鍋・大釜での加熱調理の際でもなかなか死滅しません。また、ウエルシュ菌は偏性嫌気性菌(酸素がない、もしくはとても少ない状況で増殖する菌)で、加熱調理により他の細菌が死滅し、且つ、空気(酸素)が抜けた状態の大鍋・大釜の中は、増殖に適した環境となります。そして、作り置き等で増殖に適した温度帯(12~50℃、至適温度:43~45℃)に長く置かれると、食品中で発芽(芽胞から再び増殖できる栄養型となること)し、急速に増殖します。

ウエルシュ菌食中毒の症状は?
ウエルシュ菌食中毒は、潜伏期間6~18 時間(平均 10 時間)の後、腹痛や下痢等の症状を起こします。発熱や嘔吐はほとんどみられません。多くの場合、発症後 1~2 日で回復するとされていますが、基礎疾患のある方や子供、高齢者の方は重症化することがあります。

ウエルシュ菌食中毒の予防方法は?
食中毒予防の基礎に関してはこちらをご覧ください。
>>食中毒と食中毒予防についてのページへ

具体的なウエルシュ菌食中毒の予防方法としては、主に4つのポイントがあります。
①「喫食までの時間を短くする」②「加熱調理後に速やかに10℃以下に冷却するか、55℃以上で保管する」③「よく混ぜながら調理する」④「調理後の食材は小分けにして保存する」

 

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    • JFS監査および適合証明プログラムに基づく監査会社

 



参考

・厚生労働省 4.食中毒統計資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html

・食品安全委員会 ファクトシート ウェルシュ菌食中毒(Clostridium perfringens foodborne poisoning
https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_clostridiumperfringens.pdf

・国立感染研究所 ウエルシュ菌感染症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/324-c-perfringens-intro.html



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