食中毒の発生状況を総まとめ(2019~2023年)
今回は厚生労働省の食中毒統計資料に基づいて、『事件』、『患者』、『死者』として記録されている過去5年間の食中毒の状況についてまとめました。この記事の中で各食中毒の原因となる菌やウイルスなどの特徴やどのようなポイントに注意すればよいかをまとめた記事についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
※2020年12月15日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2024年6月3日に再度公開しました。
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1. 過去5年間の食中毒事件数・患者数・死者数
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|
事件数 | 1,061 | 887 | 717 | 962 | 1,021 |
患者数 | 12,637 | 14,613 | 11,080 | 6,856 | 11,803 |
死者数 | 4 | 3 | 2 | 5 | 4 |
厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2019年~2023年のデータを基に作成
2023年は事件数・患者数ともに新型コロナウイルス感染症の流行前の2019年に迫る数値となっています。
厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2019年~2023年のデータを基に作成
2. 患者数が500人を超える食中毒事例
過去5年間で患者数が500人を超える事例については下表のとおりです。
発生年月 | 発生場所 | 原因施設 | 原因食品 | 原因物質 | 患者数 | 摂食者数 | 死者数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2020年6月 | 埼玉県 | 飲食店 | 海藻サラダ | その他の病原大腸菌 | 2,958 | 6,762 | 0 |
2020年8月 | 東京都 | 仕出屋 | 不明 | その他の病原大腸菌 | 2,548 | 37,441 | 0 |
2020年12月 | 山形県 | 仕出屋 | 不明 | ノロウイルス | 559 | 1,983 | 0 |
2021年4月 | 岡山県 | 仕出屋 | 不明(4月26日~29日に提供の給食弁当) | ノロウイルス | 2,545 | 6,453 | 0 |
2021年6月 | 富山県 | 製造所 | 牛乳 | その他の病原大腸菌 | 1,896 | 6,243 | 0 |
2023年8月 | 石川県 | 飲食店 | 8月11日~17日に提供の湧水を使用した食事 | カンピロバクター・ジェジュニ/コリ | 892 | 1,298 | 0 |
2023年9月 | 青森県 | 製造所 | 9月15日、16日に製造した弁当 | その他 | 554 | 不明 | 0 |
厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2019年~2023年のデータを基に作成
ノロウイルスによる食中毒事故は事故件数、患者数ともに例年多く、患者数が500人を超える事例も散見されます。また2023年はカンピロバクター・ジェジュニ/コリによる大規模な食中毒事故が発生しました。
【カンピロバクター・ジェジュニ/コリ】
カンピロバクター・ジェジュニ/コリによる食中毒は、少ない菌数で発症するとされており、加熱不良の食品を提供した場合には、食中毒事故につながりやすいといえます。
カンピロバクター属菌の特徴や予防方法は以下をご覧ください。
>>「カンピロバクター食中毒の症状や特徴、予防方法について」
カンピロバクター食中毒のリスクを見える化するには
>>食品微生物検査のページへ
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【ノロウイルス】
ノロウイルスは感染力が強く、集団感染のリスクの高いウイルスです。カキなどの二枚貝の喫食による食中毒が有名ですが、不顕性感染者(感染しているが症状がないまたは軽症)から食材を二次汚染し食中毒につながることも十分に気を付けなければなりません。
ノロウイルスの特徴や予防方法は以下をご覧ください。
>>「ノロウイルス食中毒の症状や特徴、予防方法について」
ノロウイルス検便で不顕性感染者の発見が大切です。
>>ノロウイルス検便のページへ
ノロウイルスによる環境の汚染を確認するには
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【その他の病原大腸菌】
多くの大腸菌は無害ですが、一部の、特に人体に悪影響を与えるものを病原大腸菌といいます。
病原大腸菌の特徴や予防方法は以下をご覧ください。
>>「病原大腸菌による食中毒の種類や事故事例について」
病原大腸菌による食中毒のリスクを見える化するには
>>食品微生物検査のページへ
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3. 死者が発生した食中毒事例
過去5年間で死者が発生した食中毒事件は下表のとおりです。
発生年月 | 発生場所 | 原因施設 | 原因食品 | 原因物質 | 死者数 | 患者数 | 摂食者数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2019年1月 | 奈良県 | 仕出屋 | 不明 | ノロウイルス | 1 | 81 | 184 |
2019年4月 | 群馬県 | 家庭 | イヌサフランの炒め物 | 植物性自然毒 | 1 | 2 | 2 |
2019年6月 | 秋田県 | 家庭 | 山菜の炒め物(イヌサフラン) | 植物性自然毒 | 1 | 1 | 1 |
2019年12月 | 広島県 | 家庭 | フグ | 動物性自然毒 | 1 | 1 | 1 |
2020年1月 | 鹿児島県 | 家庭 | グロリオサ球根(推定) | 植物性自然毒 | 1 | 1 | 2 |
2020年8月 | 栃木県 | 家庭 | キノコの油炒め | 植物性自然毒 | 1 | 2 | 2 |
2020年10月 | 徳島県 | 家庭 | ふぐ(種類不明) | 動物性自然毒 | 1 | 1 | 1 |
2021年4月 | 沖縄県 | 老人ホーム | 4月13日に調理の春雨の和え物 | サルモネラ属菌 | 1 | 11 | 179 |
2022年4月 | 宮崎県 | 家庭 | グロリオサ | 植物性自然毒 | 1 | 1 | 1 |
2022年4月 | 秋田県 | 家庭 | イヌサフラン | 植物性自然毒 | 1 | 1 | 1 |
2022年8月 | 京都府 | 販売店 | 8月21日~27日に提供の肉総菜(レアステーキ、ローストビーフ) | 腸管出血性大腸菌 | 1 | 40 | 41 |
2022年9月 | 北海道 | 不明 | イヌサフラン | 植物性自然毒 | 1 | 1 | 不明 |
2022年9月 | 青森県 | 飲食店 | ふぐ(マフグ(推定))(自分の夕食) | 動物性自然毒 | 1 | 1 | 1 |
2023年1月 | 栃木県 | 老人ホーム | 不明(1月17日、18日に提供の食事) | その他のウイルス | 1 | 28 | 92 |
2023年6月 | 福岡県 | 飲食店 | 鶏肉のトマト煮(施設給食) | その他の病原大腸菌 | 1 | 19 | 41 |
2023年8月 | 和歌山県 | 仕出屋 | 8月19日、20日に調理・提供の料理 | サルモネラ属菌 | 1 | 117 | 384 |
2023年10月 | 北海道 | 家庭 | ドクツルタケ(推定) | 植物性自然毒 | 1 | 2 | 2 |
厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2019年~2023年のデータを基に作成
食中毒による死亡事例の多くは、有毒の植物や生物を誤食することが原因となりますが、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌などの細菌性食中毒、ノロウイルスでも起こっており、十分に注意が必要です。
【植物性自然毒】
植物性自然毒はキノコと高等植物に大別されます。
キノコ
ツキヨタケやクサウラベニタケ、テングタケ・イボテングタケが有名です。
食用と判断できないキノコは絶対に「採らない」「食べない」「人にあげない」が特に重要です。
東京都福祉保健局 食品衛生の窓 キノコ食中毒
高等植物
スイセンやトリカブト、ヨウシュウヤマゴボウなどが有名です。
植物の新芽、若葉や根、実など一部分を見ただけでは、有毒植物と食用植物とを見分けることが難しい場合があります。
東京都福祉保健局 食品衛生の窓 間違えやすい有毒植物
厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル
【動物性自然毒】
すぐに思い浮かぶのはフグではないでしょうか?
フグの体内に含まれるテトロドトキシン(TTX)がフグの喫食による食中毒の主な原因です。過去には死亡例も報告されています。
国内では都道府県知事等が認めた専門のフグ処理者により調理されたフグが消費者に提供されていますが、釣ったフグを家庭で調理し喫食したことによる食中毒事故が起こっています。自分で釣ったフグ又は知人から譲り受けたフグの素人調理は絶対に止めてください。
厚生労働省 安全なフグを提供しましょう
フグ以外の有毒な魚や二枚貝、巻貝の喫食による食中毒もあります。
厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル
【サルモネラ属菌】
サルモネラ属菌は多くの家畜や動物の体内に生息し、乾燥に強い菌です。
特に鶏肉や鶏卵の加熱不足や生食が発症の原因となることが多いとされます。
サルモネラ属菌の特徴や予防方法は以下をご覧ください。
>>「サルモネラ食中毒の症状や特徴、予防方法について」
サルモネラ食中毒のリスクを見える化するには
>>食品微生物検査のページへ
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【腸管出血性大腸菌】
腸管出血性大腸菌は人の腸管内でベロ毒素(vero toxin ; VT)と呼ばれる毒素を産生し、その毒素により出血性の大腸炎を引き起こす細菌性の食中毒です。中でもO157が有名で少量でも発症しやすく、場合によっては重篤な症状を伴う特徴があります。
腸管出血性大腸菌の特徴や予防方法は以下をご覧ください。
>>「O157等の腸管出血性大腸菌食中毒の症状や特徴、予防方法について」
腸管出血性大腸菌食中毒のリスクを見える化するには
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4. 食品の安全を確認するには
食品の安全を脅かす危害は、「生物学的危害」「物理的危害」「化学的危害」の3つに分類されます。
なかでも主に微生物を原因とする「生物学的危害」は、実際に発生した飲食関連の事故のうち約9割を占めるといわれています。
目には見えない微生物を検査によって「見える化」し、その状態を把握することが、微生物のコントロールには必須です。
食品微生物検査では、食品の種類・製造工程・保存条件など、検査対象の状況とその目的に応じて、衛生指標菌検査と食中毒菌検査を組み合わせて行われます。
その結果から、食中毒予防やリスク低減につなげることが可能です。
また、専門機関で検査することで、検査結果から改善のアドバイスが受けられます。より安心して食品をお客様に提供しましょう。
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