食品中の異物検査
食品中の異物とは
食品中の異物とは、生産、貯蔵、流通の過程での不都合な環境、取り扱い方、製造方法などに伴って食品に侵入、迷入、または発生した固形物を一般に指します。この他にも、食品汚染の可能性を示す形跡(動物の尿、かじり跡、足跡など)も食品衛生上、異物として取り扱います。もし、異物が発見された場合、まず異物が何であるかを特定し、混入した原因を調べる必要があります。
そこで、今回は実際の異物検査とはどのような検査なのか、ご紹介したいと思います。
異物検査は顕微鏡による観察を中心に、燃焼試験・磁性試験や染色試験など多様な検査から、その異物や原因究明に合った検査を選択して実施します。今回はそのなかから、プラスチック樹脂の同定に有用な「FT-IR」と、混入した異物が加熱されているか否かを推測できる「カタラーゼ試験」についてお話しします。
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1. FT-IR(フーリエ変換型赤外分光法)
物質に赤外光を照射すると、分子の振動エネルギーに一致する波長の光が吸収され、この赤外吸収スペクトルを測定することで分子構造(官能基)の情報を得ることができます。
簡単に言うと、FT-IRはサンプルに光を照射し、サンプルが吸収した光の波長(光のエネルギー)を図(吸収スペクトル)として表します。これを解析し、既知の測定結果(ライブラリ)と照らし合わせることで、それが何であるかを同定することができます。
FT-IRによる分析では、その異物が有機物(ゴム・プラスチック・食品など)なのか、無機物(金属・鉱物など)なのか振り分けることができ、さらに有機物の中の、特にプラスチック樹脂に関しては、その種類を特定することも可能です。
一方、無機物についてはEDX(蛍光X線分析装置)や金属定性試験により分析することが可能です。
サンプルとして市販のポリエチレンの袋を測定して得られた吸収スペクトルを表1に示します。縦軸に吸光度、横軸に波長を示しています。
測定して得られた吸収スペクトルを専用のソフトウェア上でライブラリ検索を実施したスペクトルを表2に示します。黒字で示したサンプルは赤字で示したポリエチレンと非常によく似たスペクトルを示しています。したがって、このサンプルはポリエチレンであることが分かります。
2. カタラーゼ試験
異物混入事例のなかで、混入した異物が加熱されているか否かについて、問題になるケースがあります。このような時に参考となるのがカタラーゼ試験です。カタラーゼ試験の結果によっては、異物が混入したタイミングの推測も可能となります。
カタラーゼとは動植物界に広く存在する酵素です。酵素は加熱を受けるとその活性を失う(失活する)性質を持っており、その性質を利用し、異物がカタラーゼ活性を示すか否かを検査することで、その異物が加熱を受けたかどうかを推測します。
カタラーゼ試験は異物が「毛髪(毛根部を含む)」や「虫」である場合に実施可能で、ガラス片、金属片及びプラスチック樹脂などでは一般的に対象となりません。
実際にカタラーゼ試験を行うと、写真のように連続した発泡があり、その異物はカタラーゼの活性があり(陽性)、加熱されていないと推測されます。
- 結果の考え方としては、
- カタラーゼ活性(-)・・・加熱を受けたと考えられます。
- カタラーゼ活性(+)・・・加熱を受けていないと考えられます。
以上のようになりますが、実際には加熱を受けた検体でも、加熱から時間が経ち、汚れや微生物などが付着している場合、付着物由来のカタラーゼ活性が(+)となり、加熱を受けていないと思われる結果を示すケースや、逆に実際は加熱を受けていない検体でも、異物が熱いものの上に長い時間置かれていたことによってカタラーゼ活性が(-)となり、加熱を受けたような結果を示すことがあります。
余談ですが、検査員2名から毛髪を採取し、それぞれ検査を実施すると、活性の強弱に差が認められることがあり、個体差や環境の違いに影響を受けていると考えられます。 したがって、結果のとらえ方としては加熱の有無について断言することは非常に難しく、あくまでも推測としてとらえていただければと思います。
今回は当社で行っているFT-IR、カタラーゼ試験についてご紹介いたしました。 混入経路を特定し、クレーム対策や再発防止への取組みはとても重要になります。
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