HACCP制度下での購買管理・サプライヤー管理とは?

HACCP制度化が完全施行し、営業許可・届出制度も動き出しました。ここで改めて2018年の食品衛生法改正の経緯を思い出してみましょう・・・2003年の改正から15年が経過し、食品の安全を取り巻く環境が変化。調理食品や外食・中食への需要の増加等の食へのニーズの多様化や輸入食品の増大など食のグローバル化が進展。一方で、食中毒件数は依然として多く、広域的な食中毒事案も発生。これらの現状と課題を踏まえて食品衛生法は改正されたのです。
そこで、目指されたのが「フードチェーン全体を通じた衛生管理の向上」。食中毒対策の強化のキーワードとして用いられましたが、HACCP制度化や食品用器具および容器包装規制の見直し、営業許可制度の見直しと届出制度の創設などでも根本となっています。
ここでは、フードチェーンで繋がっている食品事業者の皆様が取り組む購買管理とサプライヤー管理について、お話したいと思います。
1. 購買管理とサプライヤー管理
ISO規格では過去は「購買」今は「外部提供のプロセス, 製品またはサービスの管理」と呼ばれるものに該当します。規格によって定義は異なるのですが、今回はざっくりと、実際に使用するために購入するモノやサービスに対して行う管理を購買管理、それを提供する供給者の組織に対して行う管理をサプライヤー管理と呼ぼうと思います。
サプライヤー管理としては・・・ | 購買管理としては・・・ |
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規格書をきちんと作成・更新して、提供してくれる相手かな? 必要に応じて衛生管理状況や検査データなどの情報共有をしてくれる相手かな? 注文どおりに安定して供給する能力が十分にある相手かな? トラブル時に綿密にコミュニケーションのとれる相手かな?・・・などなど |
あらかじめ原材料等の規格書を入手して、その規格に合致したものがきちんと(注文通りに)納品されていることが確認できる仕組みができている?動いている? 原材料等に合わせて、確認するべき項目と基準を整えている?実際に行っている? 基準外になった際の対応をあらかじめ決めている?皆に周知している?・・・などなど |

「適切な管理が行われている原材料を仕入れる」「受入時には衛生上の観点から品質、鮮度、表示等を点検する」という活動について、フードチェーンで繋がっている点を意識してより上流からリスクを減らしていこう、というのがこれからの管理の目的となります。特にサプライヤー管理については今後もレベルアップの余地が大いに残されているかもしれません。このサプライヤー管理では、取引先(供給者)の組織体制・衛生管理体制が信頼できるかどうかを評価することになり、供給者側の立場では信頼関係を築き取引を行うために評価されることになります。サプライヤー管理は取引先評価を通じての信頼関係構築でもあるのです。
2. 大量調理施設衛生管理マニュアル改正に反映された2017年刻み海苔のノロウイルス食中毒事故
2018年の食品衛生法改正前にも、サプライヤー管理のポイントは例えば大量調理施設衛生管理マニュアルに組み込まれたことがあります。
きっかけは2017年に発生した刻み海苔のノロウイルス食中毒事故でした。この事故では
- あらゆる食品(乾物)が感染源となりうる
- ノロウイルスは約2ヵ月間感染性を保持している
という教訓をもたらしました。そこで2017年6月の大量調理施設衛生管理マニュアル改正では重要管理事項の「原材料の受入れ・下処理段階における管理」に以下が追加されました。
HACCP制度化が完全施行され、上記を含めた管理体制を衛生管理計画という共通言語(共通認識)でお互い確認することができるようになりました。

3. 衛生管理の見える化、そして説明責任
HACCP制度化により衛生管理の「見える化」が取り組まれています。また、食品用器具・容器包装の衛生規制でもポジティブリスト制度に適合している旨の説明責任がこれらの取扱い事業者に課せられました。
改正食品衛生法が施行され、フードチェーン全体の衛生管理の「見える化」が進んでいます。この動きを最大限活用して、適切で安全な原材料や器具・容器包装を入手し、そして提供していきましょう。
初出:2021年9月1日
Written by
株式会社町田予防衛生研究所
町田予防衛生研究所は、食の安全に関わる各種検査やコンサルティングなど幅広く商品・サービスを取り揃え、ワンストップで食の安全をサポートする企業です。
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