検便の必要性について
ノロウイルスや食中毒菌による事故、感染症防止には、正しい手洗いや体調チェックなど、食品取扱業務の従事者の衛生管理がとても重要です。この衛生管理に「定期的な検便(糞便の細菌/ウイルス検査)」の実施も含まれます。
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1. 人の衛生
調理に従事する人は、食品との直接または間接的な接触が、食品を汚染することのないよう、清潔を維持し、衛生的に行動することが求められます。
食品衛生法が改正され、原則としてすべての食品等事業者に「HACCPに沿った衛生管理」の実施が義務づけられました。「HACCPに沿った衛生管理」は、「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の2種類があり、事業者の規模や業種に応じていずれかの衛生管理を行うこととなります。
それぞれの「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」では、食品取扱者等の衛生管理として次の項目を示しています。
ルールや点検 日々の活動で衛生を維持
- 手洗い
- 衛生的な服装
- 異物を持ち込まない
- 手袋の使用
- 衛生的な行動
- 食品取扱者以外の者の現場への立ち入り
+
検査 管理者が結果を確認・管理して衛生を担保
- 健康診断
- 体調不良時の医師の診断
- 検便
検便を定期的に実施し、食中毒菌やウイルスを保菌・感染している方が食品を取扱わないよう管理することによって、ノロウイルスや食中毒菌による事故の予防につながります。
厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは、調理従事者等の衛生管理における検便について以下のように示されています。
- 調理従事者等は臨時職員も含め、月に1回以上の検便を受けること。
- 検査には腸管出血性大腸菌、必要に応じ10月から3月にはノロウイルスの検査を含めること。
2. 役割の変遷と健康保菌者
1950年代から60年代、赤痢菌による感染症患者は、年間数千人報告されていました。行政は特に夏期に多発する赤痢(腸チフス、パラチフスも含む)の予防の一環として、飲食物取扱者、集団給食従業員、上水道関係者等の保菌者検索を大々的に計画し、検便の義務化・勧奨を行い、疾患の予防に努めました。その結果、70年代半ばには患者数・保菌者とも大きく減少しました。
一方、赤痢菌は沈静化しましたが、入れ替わるように食品衛生上の問題としてサルモネラ菌が台頭し始めます。その要因として、輸入食品や輸入された家畜の飼料などによる環境汚染の拡大などが反映していると考えられています。
その後、90年代には腸管出血性大腸菌が、そして2000年代になるとノロウイルス食中毒が数多く発生し、それぞれの食中毒の特徴、予防のポイントが検討されてきました。検便は時代によって対象とする病原体を変えながらも、その実施と管理によって、保菌者・感染者が食品を取り扱う業務・現場に入り、食中毒事故等のリスクとならないよう、その役割を果たしています。
検便では、これらの食中毒菌の保菌・排出状況を検査しますが、保菌者には自覚症状のない「健康保菌者(不顕性感染者)」が含まれます。健康保菌者には症状がある方と同程度に菌を排出しているケースもあります。ノロウイルスの不顕性感染者が、本人が気づかぬまま調理業務に従事することで、食品への二次汚染による食中毒事故の発生や他のスタッフへの感染拡大に至ってしまった例も多く見られます。
そのため、自覚症状のチェックの他に、定期的な「検便」も衛生管理には必要なのです。
3. チフス菌による食中毒事故
2014年の夏、チフス菌による食中毒事故が発生しました。チフス菌による感染症は、腸チフスを代表として昭和初期の代表的な伝染病でしたが、その後、患者数は急激に減りました。この食中毒事故は食中毒の原因としてチフス菌が加わって以来、全国でも初めてのことでした。
調査の結果、施設の従業員がチフス菌の健康保菌者であり、生野菜サラダの調理を行っていた事が判明しました。さらにその従業員は海外から帰国したばかりでした。もし業務復帰する前に検便を行っていれば、この事故は回避できたかもしれません。チフス菌はサルモネラ菌の一種で、一般的な検査項目「3項目(赤痢、サルモネラ、O157)」で検出できます。
このように、日本ではあまり見られない病原体も、ヒトやモノの国際的な流通が活発になることで、海外から入ってくる可能性があり注意が必要です。
国立感染症研究所 生サラダが原因と推定されたチフス菌による食中毒事例―東京都
4. 検便による衛生管理
検便の結果は、陰性ばかりではありません。衛生管理上、検便で重要となるのは、陽性の際の処置です。
- 陽性が判明した際の対応方法などはあらかじめマニュアル化しておきましょう
- 実際にどのように対処したのかは記録として残しておきましよう
さらに当たり前のことではありますが、記録は正しく付けなければいけません。当社業務の衛生点検などでは、記録に整合性がないことによる指摘項目がよく見られます。
体調不良時には、その症状などを速やかに管理者に報告し相談できる職場環境も大切です。「他のスタッフに迷惑がかかる」と体調が悪い時に無理をし、かえって食中毒事故が起きてしまっては大変です。
東京都の調査では、4割以上の食品関係従事者が上司や責任者に体調不良を報告せずに仕事に就いた経験があるという結果もありました。
検便は食品衛生上の確認手段の一つです。検便の実施頻度や衛生管理方法等、他の管理方法とも組み合わせて有効に活用しましょう。
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