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まさか…蛇口の水から寄生虫? - 食中毒を起こす寄生虫講座 第5回 -

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まさか…蛇口の水から寄生虫?

いきなり蛇口から寄生虫では、みなさんビックリしますよね。
ただこれは寄生虫が蛇口からニョロニョロ出てくるわけではありません。目に見えないくらい小さな寄生虫の話です。


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寄生虫は、ギョウ虫、カイチュウ、サナダムシのように、目に見える大きさの寄生虫ばかりではなく、原虫と言って100分の1ミリメートルほどの小さな寄生虫もいます。原虫のなかまでは、蚊を媒介して人間に病気をうつすマラリア原虫が有名ですが、性病として重要なトリコモナス原虫や、魚や動物の肉などに寄生しているクドアやサルコシスティスも食中毒の原因として重要な原虫のなかまです。

原虫には、長い時間水の中にひそんで、人にうつる機会をうかがっている種類のものがいます。クリプトスポリジウム、ジアルジア(ランブル鞭毛虫)、サイクロスポーラです。
そのなかでも、クリプトスポリジウムは水からうつる原虫としては最もやっかいなもので、さまざまな哺乳類、鳥類、爬虫類に寄生しており、20種類以上いることがわかっています。そのうち13種類は人にも寄生して、嘔吐や下痢などの食中毒症状を起こしますが、困ったことにクリプトスポリジウムには、まだ良く効く治療薬が開発されていないので、自己免疫力で自力で回復するしかないんです。健康な成人であれば1~2週間程度安静にしていれば、症状も軽減して回復に向かうのですが、免疫不全などの持病を持たれている患者では、回復することができずに激しい脱水症状を起こして、死に至ることがあります。
もうひとつ、この寄生虫の特徴として驚くことは、集団感染が起こった時の患者数の多さです。
水ってたくさんの人が共有して使っているので、原因が発生すると広がりも大きくなります。世界最大の感染事例は、1993年にアメリカのウィスコンシン州ミルウォーキー市で40万人以上が感染し、約400人の死亡者を出した事例です。
国内でも集団感染は発生していて、1994年には神奈川県の雑居ビルの利用者461人が、原虫に汚染された受水槽からの給水により感染していますし、1996年に埼玉県越生町で、全住民の71%にもなる、8,800人が原水の汚染により感染しています。これはすべて水道の蛇口から出た水を利用した人が感染しているのです。
水道の水は、大腸菌などの細菌を増やさないために塩素での消毒を行っていますが、クリプトスポリジウムなどの原虫には、塩素はまったく効果がなかったんです。
当時は、水の中に塩素の消毒が効かない寄生虫がいることなどは想定されておらず、多数の感染者を出してしまったわけですが、その後多くの浄水施設では、ろ過の徹底と紫外線照射による滅菌などのクリプトスポリジウム対策が取られたことで、近年では水道水を原因とした集団感染は発生してはいないようです。
ただ、まだ塩素消毒だけしか行っていない浄水施設も見られることや、それらの施設の原水からはクリプトスポリジウムやジアルジアが検出されていることから、今後も注意が必要でしょうね。

クリプトスポリジウムは水の中で長期間生きているために、プールや小学校の野外体験学習などでの集団感染も確認されています。
それでも日本国内の水道の水は対策がかなり進んでいるので良いのですが、諸外国の多くはまだ対策が遅れていますので、蛇口から出てくる水でも安心はできません。
寄生虫がいる水で野菜や果物を洗って、シャワーも浴びるし洗濯だってします。実際に海外旅行に行って、調理された野菜サラダやフルーツジュースから、これらの寄生虫に感染して食中毒になる事例はかなり多いようです。


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特にサイクロスポーラは、洗浄水を介しての野菜や果物からの感染が多いので、美味しそうなトロピカルフルーツ盛り合わせなどでも、注意が必要かもしれませんよ。


これらの水を介して食中毒を起こす寄生虫は、衛生状態の悪い地域だけではなく、比較的衛生状態の良い地域でも発生することがあります。また、クリプトスポリジウムやジアルジアは、人から人や、動物から人にもうつりますので、集団感染でない場合には、うつった原因の特定が難しいこともあります。

 

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使用する水を常に沸騰させれば、これらの寄生虫にうつることもありませんが、野菜や果物を洗う水や、シャワーの水を毎回沸騰させるのは無理ですよね。

 



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著者

福富先生

福富 裕之先生

株式会社 エフティービー科学 代表取締役
寄生虫研究者・異物鑑定検査員・音楽家
【主な研究内容】
消化管寄生原虫の生態と分類
Diphyllobothrium属条虫類の生態と分類
食品由来寄生虫の疫学
環境生物と寄生虫との関連
【主な所属学会】
日本寄生虫学会正会員
日本臨床寄生虫学会正会員
日本衛生動物学会正会員
日本感染症学会正会員
日本臨床検査医学会正会員
神奈川県感染症医学会正会員

 

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