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寄生虫と食品リスク - 食中毒を起こす寄生虫講座 第6回 -

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寄生虫と食品リスク

ここまで5回にわたり、食中毒を起こす寄生虫の怖い話をたくさん書いてきましたが、今回は実際に寄生虫の食中毒リスクがどのくらいあるのか考えていきましょう。


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私たちは食事をしなければ生きていけません。でも食事って栄養を取るだけのものではなくて、美味しいものを食べる楽しみっていうのもありますよね。
すべての寄生虫は食品の中心部まで加熱すればうつることは無いので、調理する人がきちんと手洗いをして、食器もきれいに洗浄してあれば、寄生虫による食中毒は使用水の煮沸と加熱調理だけで完全に防ぐことができます。でも実際の料理って、刺身以外でもかなりの頻度で中心部まで火が通っていないものが多いのです。


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実は筆者は調理師免許を持っているので、若い頃はお店の厨房で調理してお客さんに料理を提供していた経験があるんですよ・・・懐かしいな。

 

料理される方はよくご存じと思いますけど、煮物は別として多くの肉料理や魚介類の料理は、中心までしっかりと火を通すと肉汁も全部出てしまうし固くなるから、最初に強火で表面をしっかりと焼いて焦げ目をつけて、うま味を閉じ込めてから中火から弱火で中心まで火を通します。本当に中心までしっかり火が通るよりも、中心は少し火が通ってないくらいが柔らかくて美味しいんです。
ステーキのミディアムでも、切ると中心は若干赤いし、ムニエルなんかだと外はカリッと中はジューシーが基本ですよね。これだと刺身とかタタキだけ食べなくても、やっぱり寄生虫の食中毒はなくならないと思います。

では、私たちはどうすればよいのでしょう。
筆者は寄生虫の研究を専門とされている先生方と、食事のおつきあいをすることがあるのですが、みなさん刺身でも生野菜サラダでも普通に食べていらっしゃいます。
寄生虫の専門家は、病気の危険性などを知識武装して自分の身を守る(知るワクチン)によって、寄生虫の食中毒を知りながら、食を楽しんでいらっしゃるのだと思います。
寄生虫の食中毒を予防するためには、何が本当に危険なのかを知ることが最も重要じゃないのでしょうか。

寄生虫の食中毒に限らず食べるということは、常にさまざまな食中毒のリスクを抱えていることを知っておかなければなりません。人は食べている限り、食中毒のリスクを0(ゼロ)にすることは不可能です。
第一章のはじめにお話したように、食中毒の原因には、細菌、ウィルス、化学物質、自然毒、寄生虫などがあります。
寄生虫による食中毒は、すべて加熱を行うことにより予防できますが、そのほかの食中毒原因物質は加熱しても毒素が残るものも多く、その点ではむしろ寄生虫のほうがリスクは回避しやすいかもしれません。
また、寄生虫を原因とした食中毒では、重症化や生命にかかわるものが、そのほかの食中毒原因物質とくらべると原因を絞り込みやすく予防はしやすいと思います。

海産の魚介類からうつるアニサキス症は、胃や腸に突き刺さって一時的に激しい痛みを引き起こしますが、病院に行き内視鏡検査で刺さった虫を取ってしまえば、ほとんどの場合はそれで治癒します。
同じく海産の魚類からうつるサナダムシの裂頭条虫類は、一匹がびっくりするくらい長くなりますが、人の体の中で数は増えませんし症状も軽く、よく効く駆虫薬があるのでそんなに心配する寄生虫ではありません。
そのほかに海産魚類からは、比較的新しく病原性が知られるようになった、クドアやユニカプスラなどの原虫類がありますが、一過性の下痢や嘔吐が主な症状で、脱水症状に注意していれば多くは重症化しません。
海産魚介類では、ホタルイカからうつる旋尾線虫が全身の皮膚の下を這い回るので怖いですね。
淡水魚介類には重症化しやすい寄生虫が多いので注意が必要です。
淡水のカニ類からうつるウェステルマン肺吸虫、ドジョウやライギョからうつる顎口虫、多くの淡水魚類からうつる肝吸虫などが重要な寄生虫です。
肉類では、ブタ肉や多くのジビエ肉(野生動物の肉)は絶対に生食するべきではありません。
ブタ肉からの有鉤条虫、クマ肉からの旋毛虫、イノシシ肉からの肺吸虫などは特に危険です。

 

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ゲテモノ食いもやめましょう。
カエルやヘビなどの両生類や爬虫類には、人にうつるさまざまな寄生虫がいることがわかっています。生き血を飲むなどは危険ですよ。

 

筆者は刺身やタタキなどのナマモノが大好きなので、いろいろな食材を食べますが、寄生虫症で重症化するリスクの高い、ゲテモノ、ジビエ肉、ブタ肉、淡水魚などの刺身や不十分な加熱の料理は食べないようにしています。
ただ、旅行とかに行くと、シカ刺し、コイの洗い、アユの刺身とか出てきますよね。
分かってはいるんですが、やはり日本人なんでしょうか・・・ついつい気持ちが。


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著者

福富先生

福富 裕之先生

株式会社 エフティービー科学 代表取締役
寄生虫研究者・異物鑑定検査員・音楽家
【主な研究内容】
消化管寄生原虫の生態と分類
Diphyllobothrium属条虫類の生態と分類
食品由来寄生虫の疫学
環境生物と寄生虫との関連
【主な所属学会】
日本寄生虫学会正会員
日本臨床寄生虫学会正会員
日本衛生動物学会正会員
日本感染症学会正会員
日本臨床検査医学会正会員
神奈川県感染症医学会正会員

 

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