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肉からも魚からも…10メートルのサナダムシ - 食中毒を起こす寄生虫講座 第3回 -

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肉からも魚からも…10メートルのサナダムシ
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肉からも魚からも…10メートルのサナダムシ

寄生虫にはミクロサイズのものからメートルサイズのものまで、いろいろな大きさのものがいますが、今回は最も大きな寄生虫の話をさせていただきます。


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寄生虫ダイエットって聞かれたことがありませんか?
一時期この話題が広がり、筆者のところにもダイエットのために寄生虫を譲って欲しいとの問い合わせが相次いで、大変困ったことになっていました。
「寄生虫は病原体なのでお譲りすることはできないんですよ。」とお断りしても、なかなか納得されないんです。


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最近はだいぶその話題もおさまり、問い合わせも減ってきてはいますが、時々「寄生虫譲って下さい!!」と突然電話がかかってくることがあります。


当時この寄生虫ダイエットの主役になったのが、サナダムシです。
ぺったんこで細長い寄生虫ですが、日本の伝統品である真田紐の形に似ていることが名前の由来となっています。英語ではテープのような虫とのことでTapewormと呼ばれ、ドイツ語ではBandwurm。どれも見たまんまの名前ですね。
サナダムシにもたくさんの種類がありますが、食べ物から人にうつる重要なサナダムシとしては、生魚を食べることによりうつる、裂頭条虫類や、生肉を食べることによりうつる、無鉤条虫や有鉤条虫が有名です。
サナダムシの仲間を条虫類と言いますが、条虫類がすべて大きなわけではなく、成虫でも1cmにならない種類もいます。一般に知られたところでは、キツネやイヌに寄生して、人にうつると重篤な症状を引き起こすことがあるエキノコックスなどは、小さなサナダムシの仲間になります。
最も大きなサナダムシは裂頭条虫の仲間で、成長するとだいたい10メートルくらいになります。国内で重要な裂頭条虫の種類では、サケやマス類の生食からうつる日本海裂頭条虫や、カタクチイワシなどの生シラスからうつる鯨複殖門条虫が知られています。
日本海裂頭条虫は長い期間、広節裂頭条虫として扱われてきましたが、日本周辺に分布するものは形態や遺伝子的に違いがあることがわかり、日本海裂頭条虫と命名されました。
鯨複殖門条虫も近年まで大複殖門条虫とされてきましたが、鯨に寄生する鯨複殖門条虫と遺伝子的に同じであることがわかり、鯨複殖門条虫に統合されました。

 

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近年では遺伝子分類の研究が進んできて、生物の名称や分類が頻繁に変更されるので、生物の分類学者はタイヘンです。生物学や医学を教えている先生方や、勉強されている学生の方々も混乱しますよね。

 

これらの裂頭条虫はいずれも大きなサナダムシですが、寄生していても腸の中でおとなしくしていることから、腹痛や下痢などの症状があまり無く、突然長い虫がおしりから出てきて、びっくりして病院に駆け込む方が多いようです。
裂頭条虫はすべて、ケンミジンコなどのプランクトンと魚類を中間宿主としなければ人にはうつらないので、人の身体の中で大量に増えたり、人から人にうつることはありません。治療も効果の高い駆虫薬があるので、サケやマス類や生シラスをたべて2~3週間後に、おしりから長い虫が出てきたら落ち着いて病院に行きましょう。
肉を食べてうつる寄生虫では、無鉤条虫や有鉤条虫が知られています。裂頭条虫と比べると、やや小さめのサナダムシですが、筆者は駆虫された8メートルの無鉤条虫を同定した経験があります。
無鉤条虫は、牛肉を生で食べることによりうつるのですが、悲しいことに牛のレアステーキやタタキとかでもうつることがあります。

 

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筆者はレアステーキが大好きなんです。

 

無鉤条虫も裂頭条虫と同じように中間宿主として牛を介さないと人にはうつらないので、人の身体の中で大量に増えたり、人から人にうつることはありませんし、症状も裂頭条虫症と同様に軽微なのですが、裂頭条虫はおしりから長い虫が出てきてびっくりするのに対して、無鉤条虫は2~3cmほどの虫の切れ端(片節)が毎日少しずつ出てくるので、裂頭条虫より気持ち悪いかもしれません。治療も裂頭条虫と同じなので、牛のレアステーキをたべて2~3週間後に、おしりから虫の切れ端が出てきたら落ち着いて病院に行きましょう。

大きなサナダムシの中で最も危険なのは、有鉤条虫です。
有鉤条虫は、豚肉を生で食べるとうつり、無鉤条虫と同じようにおしりから虫の切れ端が毎日少しずつ出てきます。ただ、裂頭条虫や無鉤条虫と違って、人の腸の中で虫の卵が孵化して、幼虫になった虫が腸の壁に侵入し、人体の至るところに移動した後に小さな幼虫の袋をたくさん作ります(有鉤嚢虫症)。作られた幼虫の袋が、筋肉内や皮下であれば腫瘤ができるだけで重症化することはあまりありませんが、幼虫の袋が脳・脊髄・心臓・眼球などの重要な器官に作られた場合には、意識障害・麻痺・失明など大変怖い症状を起こすことがあります。
日本国内では有鉤条虫に感染した豚は飼育されていないとされていますが、海外で豚肉を食べる時には、生や生焼けに注意しましょう、命にかかわります。

 

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新鮮だからと豚レバ刺しをすすめられても絶対にダメですよ。

 

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著者

福富先生

福富 裕之先生

株式会社 エフティービー科学 代表取締役
寄生虫研究者・異物鑑定検査員・音楽家
【主な研究内容】
消化管寄生原虫の生態と分類
Diphyllobothrium属条虫類の生態と分類
食品由来寄生虫の疫学
環境生物と寄生虫との関連
【主な所属学会】
日本寄生虫学会正会員
日本臨床寄生虫学会正会員
日本衛生動物学会正会員
日本感染症学会正会員
日本臨床検査医学会正会員
神奈川県感染症医学会正会員

 

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