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ジビエと寄生虫 - 食中毒を起こす寄生虫講座 第4回 -

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ジビエと寄生虫

ジビエ料理って食べたことありますか?
狩猟により食材としてとらえた野生の鳥獣の肉を利用した料理を、ジビエ料理と呼びます。
最近はジビエ料理専門店などもあって、メニューを見るとシカ肉やイノシシ肉のローストやテリーヌなど、写真だけでも美味しそうでよだれが出そうです。

ジビエ肉はネット販売もされていることから誰でも購入できますので、自分でオリジナルの料理を作る楽しみもありますし、高タンパク低カロリーで栄養価も高いと言われ、ペットの食事用にも販売されていることから人気があるみたいですね。
特に野生のシカやイノシシは増加傾向で農作物の被害も多く、駆除されたこれらの肉を有効利用しようと販売にも力を入れているようです。
ただ、これらのジビエ肉には危険性も潜んでいます。


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国内でジビエ肉として食べられているものには、カモ・キジ・ヤマバト・シカ・イノシシ・クマ・アナグマなどがありますが、これらの野生の鳥獣肉は、鶏・豚・牛などの家畜と違い、適切に衛生管理された環境下で飼育された肉ではないことから、細菌やウィルスを原因としたさまざまな病気にかかっていることがあります。もちろん寄生虫病にも、家畜と比べると比較にならないくらいの高率で罹っています。
問題なのは、これらの寄生虫のなかには、肉を食べることで人間にもうつる種類のものがかなりたくさんあることです。
実際にジビエ肉を食べたことで発生した、寄生虫を原因とした食中毒事例の一部を紹介すると、シカ肉からの住肉胞子虫症、イノシシ肉からの肺吸虫症、クマ肉からの旋毛虫症(トリヒナ症)などがあります。

住肉胞子虫はサルコシスティスとも呼ばれ、シカに寄生するものは馬肉を生で食べた時に食中毒を起こすサルコシスティス・フェアリーに近い種類のものです。食べてから数時間後に嘔吐や下痢などの症状を起こしますが、あまり重症化することはありません。
近年、シカ肉の住肉胞子虫が原因と推測される食中毒事例が報告されていますが、国内での調査では157頭のイノシシを検査して111頭(約70%)が住肉胞子虫を保有していたとの報告があります。シカでは85頭の検査で75頭(約88%)が保有していたそうです。かなり高率の保有率ですよね。


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もしかしたら食べて食中毒を起こしたんだけど、症状が軽くて原因がわからないまま市販の胃腸薬飲んで治ってる人もいるかもしれないですね。

 

肺吸虫症はイノシシが重要な感染源と言われています。主にモクズガニやサワガニなどの淡水に生息するカニからも寄生する、ウェステルマン肺吸虫と呼ばれる寄生虫が原因です。
この寄生虫は、肉を食べてすぐに症状が出るのではなく、食べてから数週間以上たってから咳や血痰などの症状が出ます。時には脳や皮下など人体の各所に寄生して重症化し、死に至ることもある怖い寄生虫です。

旋毛虫症はトリヒナとも呼ばれ、国内ではクマ肉が重要な感染源ですが、海外ではイノシシや豚肉から感染した症例もあります。最初は腹痛や下痢などの軽い症状ですが、その後全身の筋肉に寄生して発熱や筋肉痛を起こし、重症化すると呼吸が困難になります。心臓をたくさんの虫が通過するため、心筋炎や心不全を起こして死に至ることもあります。
幸いなことに、国内には死亡例がないようですが、これらの寄生虫は治癒したとしても神経障害などの後遺症を残すこともあるので大変危険です。

 

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インターネットを見ていると、「寄生虫にかかっても薬を飲めば治るから大丈夫…。」とか呑気なことを言ってる人を見かけますが、とんでもない話ですね。

 

寄生虫にうつらないようにするための方法としては、肉の冷凍と加熱が一般的ですが、旋毛虫は冷凍抵抗性といって、-18℃で1ヶ月凍結しても死なないことがわかっています。実際に国内で旋毛虫の食中毒が起こった事例では、凍結されたクマ肉を解凍してローストにして食べた料理からうつっているんですよ。
多くの寄生虫は、加熱調理することによって防ぐことができますが、実際には刺身以外にもタタキやローストされた肉からの感染事例が多いことから、ジビエ肉はきちんと中心まで加熱されるように調理しなければ、食中毒を防ぐことは難しいんですね。
ジビエ肉からの食中毒は寄生虫だけではなくて、ウィルスや細菌によるものも多いですから、中心まで火が通った加熱調理は必須です。
メディアでよく目にするのは、「このジビエ肉はとれたてで新鮮なものを信用できる業者から仕入れているので、お刺身でも安全で美味しく食べられます。」との広告や記載です。
新鮮であれば美味しいのは事実だと思いますが、寄生虫症やウィルスのことを考えると安全ではないと思います。
あくまでジビエは野生動物で、管理飼育された家畜ではありませんので、病気になるリスクはできるだけ少なくして、きちんと中心まで加熱調理されたものを食べた方が安全なのではないでしょうか。


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著者

福富先生

福富 裕之先生

株式会社 エフティービー科学 代表取締役
寄生虫研究者・異物鑑定検査員・音楽家
【主な研究内容】
消化管寄生原虫の生態と分類
Diphyllobothrium属条虫類の生態と分類
食品由来寄生虫の疫学
環境生物と寄生虫との関連
【主な所属学会】
日本寄生虫学会正会員
日本臨床寄生虫学会正会員
日本衛生動物学会正会員
日本感染症学会正会員
日本臨床検査医学会正会員
神奈川県感染症医学会正会員

 

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