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刻み海苔を介した大規模ノロウイルス食中毒事件から学ぶ(2) ~刻み海苔の汚染原因~

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前回は、ノロウイルス食中毒事件のうち史上最もインパクトのあった刻み海苔を介した食中毒事件の発生概要について述べました。

今回は、刻み海苔がノロウイルスに汚染した原因についてお話したいと思います。

本食中毒事件は、食中毒を起こすとはおよそ想像できなかった海苔が大規模な食中毒事件を起こしたということもあり、マスコミでも多く報道されました。その中で、ノロウイルスを海苔に汚染させた作業者は、当時の状況についてマスコミのインタビューに答えていました。以下の記述は、関連する自治体の公表資料や報告書の内容に加えて、マスコミの報道や作業者のインタビューで述べられた内容に基づいています。

1. 海苔の刻み作業

食中毒事件の原因となった刻み海苔は、海苔加工・販売業者から、刻み作業および包装作業の委託を受けた海苔加工業者によって製造されました。この刻み作業は、シュレッダーで紙を刻むように、シート状に加工された焼き海苔を手作業で裁断機にかけて行われていました。つまり、シート状の海苔を手で持ち、裁断する部位にセットする作業を繰り返し行うことで、刻み海苔に加工されました。

この報道を聞いた時、私は、大変驚きました。海苔の刻み作業は、自動化されているものと思っていたからです。

その後、調べてみたところ、刻み海苔に加工する装置には、自動化された切断機と手動で操作する切断機が販売されていることが分かりました。生産規模等により、自動切断機や手動切断機が使用されていると思います。

2. 汚染が起こった時の状況

この加工作業を行った作業者は、マスコミのインタビューで、汚染が起こったと推定される時期に、作業者自身に吐き気の症状があったにも関わらず、手袋着用は作業が不便なこともあり、素手のままで作業を行ったと述べていました。

その時期はノロウイルスが流行していた12月下旬だったそうです。このことは、食中毒の原因となった刻み海苔の賞味期限が2017年12月1日(製造日の翌年の当該月の1日が賞味期限日)であったことと矛盾しません。

また、管轄の自治体の調査により当該刻み作業に使用されていた裁断機からノロウイルス遺伝子が検出されました。検出されたノロウイルス遺伝子の分析が行われ、患者から検出されたノロウイルスの遺伝子型と一致したことが示されています。

これらのことから、作業者が12月下旬にノロウイルスに感染し、症状があったにも関わらず素手で刻み作業を行ったため、手指に付着していたノロウイルスが海苔を汚染したと推察することができると思います(図1-1)

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3. 汚染が拡大した要因

そのように作業者の手指を介してノロウイルスの汚染を受けたシート状の海苔は裁断機にかけられ刻まれます。その際に、海苔に付着したノロウイルスが裁断機のカッター部分に付着した可能性が考えられます。

一たびカッター部分がノロウイルスの汚染を受けると、その後に裁断される海苔はカッター部分からも汚染を受ける可能性が考えられます図1-2)

一方、裁断された海苔は、一定量ごとに包装袋に入れられ、密封されます。刻み海苔は、細長く、また、調理に使用しやすく、パラパラした状態を保つために、空気を含んだ状態で包装されていることから、刻み海苔が動きやすい状態にあります。そのため、ノロウイルスが汚染した刻み海苔と汚染していなかった刻み海苔が接触し、汚染が拡大した可能性も考えられます図1-3)

さらに、乾燥してノロウイルスが空気中の舞いやすい状態になっても、包装が密閉されていることから、包装袋の中にノロウイルスが閉じ込められ、拡散することがありません。

 

4. ノロウイルス食中毒の発生要因と教訓

以上のように、ノロウイルスの感染が疑われる症状があったにも関わらず、素手で海苔を取り扱ったことが汚染の直接的な原因であったと思われます。

  • 胃腸炎症状がある場合には食品を取り扱う作業は行わない。
  • 食品を取り扱う前には十分な手洗いを行う。
  • 食品は素手ではなく使い捨て手袋を着用し取り扱う。

などのノロウイルス食中毒予防の基本的な対策が残念ながらできていませんでした。

また、マスコミのインタビューにおいて、作業者は、「吐き気の症状があったが、ノロウイルスに感染しているとは思いませんでした。知っていたらそのような行為はしなかった」という主旨のことを述べていました。

「症状はあったが、ノロウイルスによるものとは思わなかった」ということも大きな問題であったと思います。

私自身を含めて、行政やマスコミが、ノロウイルス食中毒予防に関し、ノロウイルスについて知ること、そして、手洗いなどの基本的な衛生対策が重要であることを啓発していますが、必ずしも、食品取扱業者には身をもって理解してもらえていない場合があることが、今回の事例で浮彫りになりました。

ノロウイルス食中毒の予防の基本中の基本であるノロウイルスについて知ることの重要性をどのようにすればうまく伝えることできるのか?、改めて考える必要があると思います。

出典

1)野田 衛:刻み海苔を介したノロウイルス食中毒事件が教えてくれたこと、国立医薬品食品衛生研究所報告、135、6-17(2017)

2)野田 衛:本邦初の刻み海苔を介した分散型広域ノロウイルス食中毒事件の全体像、食品衛生研究、67、11月号、7-14(2017)

3)厚生労働省:平成29年度全国食中毒事件録-厚生労働省食中毒統計資料より-(令和2年刊)、公益社団法人日本食品衛生協会出版

参考

ノロウイルスの予防法

刻み海苔を介した大規模ノロウイルス食中毒事件から学ぶ(1) ~ウイルスによる分散型広域食中毒~

刻み海苔を介した大規模ノロウイルス食中毒事件から学ぶ(3) ~これまでの食中毒とは異なる特徴~

刻み海苔を介した大規模ノロウイルス食中毒事件から学ぶ(4) ~原因究明に至った経緯~

著者

野田衛先生

野田 衛先生

麻布大学 客員教授
国立医薬品食品衛生研究所 客員研究員
公益社団法人日本食品衛生協会 学術顧問
株式会社町田予防衛生研究所 顧問


<略歴>
1981.3:日本獣医畜産大学獣医畜産学部獣医学科卒
1981.4~1982.3:農林省動物検疫所
1982.4~2006.12:広島市役所(衛生研究所等)
2007.1~2018.3:国立医薬品食品衛生研究所・食品衛生管理部・第四室長

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