みんなで考えよう、食品ロス

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1. 食品ロスの問題

大量生産、大量消費が当たり前の先進諸国では、日々大量の食品が廃棄され続けています。食品廃棄物の中で、「本来食べられるにもかかわらず捨てられる食品」を食品ロスと言い、FAO(国際連合食糧農業機関)は、「人の消費に当てることのできる食料が、サプライチェーンの様々な段階で失われ、量が減少すること」と定義しています。

食品ロスは、単に「食品がもったいない」と言う問題にとどまらず、

資源の無駄使い:田畑や牧場での農産物や畜産物の生産や工場などでの食料品の製造において多くの資源が使われており、食品ロスの発生はそれらの資源の無駄使いになる。

地球温暖化の原因:ゴミを燃やすときには、灯油や重油などの燃料を使うとともに、地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスが発生している。特に、食品は水分を含み多くのエネルギーが必要。

税金の問題:ゴミの処理には、燃料代や人件費、焼却設備の整備などに多額の費用が必要で、その費用の大部分は国民の税金が使われる。

など、様々な課題にも直結しています。

また、言うまでもなく、世界的な人口増加、途上国での貧困・餓死などの問題もあります。

これらの背景から、2015年国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の中に、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」という目標(ターゲット12.3)が盛り込まれました。

2. 我が国の食品ロス削減に向けた取り組みと現状

我が国では、以下の2つの法律を基に食品ロス削減に向けた取り組みを行っています。

(1)食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)

食品の売れ残りや食べ残し、製造・加工・調理の過程で生じた「くず」等の食品廃棄物等について

①発生抑制と減量化による最終処分量の減少
②飼料や肥料等への利用、熱回収等の再生利用

についての基本方針を定め、食品関連業者による取り組みを促進する。

(2)食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)

食品ロスの削減に関し、国、地方公共団体等の責務等を明らかにし、その基本方針や施策の基本となる事項を定めることで、食品ロスの削減を総合的に推進する。

これらの法律を根拠として、我が国では、2030年までに2000年比で食品廃棄物の量を半減させることを目標としていますが、2010年までは順調に減少してきたものの、その後足踏み状態が続き、未だ目標の達成には至っていません(農林水産省資料)。

食品廃棄物における食品ロスが占める割合は、一般家庭からの廃棄物や消費者に近い段階(外食産業、食品小売業)での事業系の廃棄物で高くなっています。これは、食品のライフサイクルの川下では、

①可食部分の割合が高くなる
②外食時の食べ残し
③買物時の鮮度志向等
④消費者の意識・行動が影響しやすい

などが理由として考えられ、消費者の意識・行動と密接に関連しています。そのため、食品ロスの削減には、国民一人ひとりの取り組みが特に重要になります。

3. 食品ロス削減月間

このように、食品ロスの削減を推進するためには、国民一人ひとりがその課題を認識し、日々の生活の中で、食品ロスを削減するための行動に移すことが大切です。そのため、食品ロス削減推進法では、毎年10月を食品ロス削減月間10月30日を食品ロス削減の日と制定し、国民に広く食品ロス削減への理解と協力を求めています。

4. 消費者庁が実施した「めざせ!食品ロス・ゼロ」川柳コンテスト

国の取り組みの一つに、消費者庁が実施した「めざせ!食品ロス・ゼロ」川柳コンテストがありました(10月31日で応募終了)。これは、食品ロスの削減について、国民各層がこの問題を「他人事」ではなく「我が事」として捉え、「理解」するだけにとどまらず「行動」に移してもらうための、広報・啓発活動の一環として行われました。お笑いタレントの柳原加奈子さんたちが、審査委員を努められています。私も愚作をいくつか応募いたしました。

なお、昨年(令和6年度)の受賞作品として、以下の3作品が消費者庁ホームページに掲載されていました。

内閣府特命担当大臣賞

フードロス 残していいのは 笑顔だけ

(神奈川県 安藤 百花 さん)


消費者庁長官賞

規格外 人も野菜も 味がある

 (静岡県 増田 浩二 さん)

おいしいね 年に一度の 保存食

 (大阪府 荒川 隼至 さん)

いずれも、素敵な作品だと思います。

 

5. 麻布大学の学生による食品ロス削減に関する川柳

私は、麻布大学で衛生行政学の授業を担当させていただいていますが、食品ロス削減月間に合わせて、10月に食品ロスに関連した授業を行っています。その授業の中で、川柳コンテストを含め消費者庁等の行政の取り組みを紹介するとともに、食品ロス削減に向けた川柳の創作を課題として受講生に課しています。学生各自に自分のこととして食品ロスの問題を考えてもらいたいからです。令和7年度の授業において、受講生同士による投票で人気の高かった2句と筆者が個人的に好きな1句について、作品、詠み人(ペンネーム)及び作者の作品にかけた想い(説明)について紹介します。


優秀作品

捨てないで 食べてほしくて 生まれたの

(食路捨 減)

農産物や畜産物、水産物にかかわらず食品はヒトが生きていく上で欠かせないものですが、年間でみると大変多く残されています。食品はたくさんのヒトによって食材が育てられています。貧しい国では食べられないヒトもいます。そんな食品を残してしまうことは大変勿体ないです。そのため、食品ロスを少しでも減らせるように食品の立場になって詠みました。

捨てないで食べてほしくて生まれたの

(あなたの命を)「いただきます」の気持ちを忘れず、残さずいただき、食品ロスを防ぎましょう。


 

入選作品

食べ残し 俺が向かうわ 全部くれ

(oi)

この俳句には、深刻化するフードロス問題への強い意志を込めました。まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物たちに対し、「それなら俺が食べる!」という覚悟をユーモアを交えて表現しています。食べ残しを減らすことは、小さな行動でも社会全体の意識を変える大きな一歩になります。そんな思いをこの一句に託しました。

みんながこのような気持ちで食に向い、食品ロスをなくしてくれ!!


 
なお、筆者が個人的に好きな作品は、以下の作品です。

皮や芯 新たなレシピの 出会いの場

(うすしお)

野菜の皮や芯などは食べられるにも関わらず、捨てられてしまいがちです。そこで野菜の皮や芯を捨てる前においしく食べられるレシピを調べてみるという習慣を提唱したいと思い、考えました。新たな発見が得られるかもしれないという前向きな印象にして、気軽に食品ロスの問題と向き合えるような川柳にしました。

新しいレシピができたら、ぜひシェアしてください。人との出会いの場にもなりますね。

掲載できていない作品を含め力作ぞろいでした。学生の皆さん、ありがとうございました。これを機に食品ロスの課題に「我が事」として向き合ってくれれば、大変嬉しく思います。


著者

野田衛先生

野田 衛先生

麻布大学 客員教授
国立医薬品食品衛生研究所 客員研究員
公益社団法人日本食品衛生協会 学術顧問
株式会社町田予防衛生研究所 顧問


<略歴>
1981.3:日本獣医畜産大学獣医畜産学部獣医学科卒
1981.4~1982.3:農林省動物検疫所
1982.4~2006.12:広島市役所(衛生研究所等)
2007.1~2018.3:国立医薬品食品衛生研究所・食品衛生管理部・第四室長

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