2019年 食中毒発生状況の振り返り
本年5月25日ついに、日本の全都道府県での新型コロナウイルスに伴う、急事態宣言が解除されることになりました。東京都では飲食店の営業時間の段階的な緩和を行っていくことが発表されています。こうした中、菌・ウイルスといえば「コロナ」と連想しがちですが、例年6月から9月にかけて細菌性食中毒の発生しやすい傾向にあり、「コロナ」だけではなく「食中毒」にも十分な注意が必要です。そこで今回は厚生労働省の食中毒統計資料を基に、2019年の食中毒発生状況を過去5年間のデータと比較しながら振り返ります。
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1. 食中毒事故発生件数の比較
まずは、2019年の食中毒発生件数と過去の5年間の発生状況を比較していきます。下図をご覧ください。
2019年の食中毒発生件数は過去5年で最少の2017年度の1,014件に次ぐ1,061件となっております。また、過去5年間の食中毒発生件数の平均1,149件と比較すると約8%減少しており、2019年は比較的食中毒事故が少なかった年だと考えられます。
2. 食中毒事故の原因食品に関する比較
前項では食中毒事故の発生件数についての比較を行いましたが、どのような食品が原因となって食中毒が発生しているのでしょうか。原因となる食品が判明しているものの内から上位3位について下記の通りの推移を示しています。(上位3位までを表示し、4位以降または原因不明や原料が複合的もの等についてはその他として表示しております。)
食中毒の原因となる食品は例年1位:魚介類、2位:肉類及びその加工品、3位:野菜類及びその加工品の順に多くなっています。
2019年の魚介類が原因となる食中毒については、過去5年間最多の2018年の414件に次ぐ273件となっております。推移としてはワースト2位となりますが、過去5年間の平均の発生件数が253件であるため、平均値からの増加率は約7%と大きく増加したわけではないことが分かります。
2019年の肉類及びその加工品については過去5年間で最少の58件となっております。過去5年間の平均値が約66件であり、平均値から約12%減少したことがわかります。
2019年の野菜類及びその加工品の食中毒事故については46件であり、過去5年間の平均が45件であるため、おおよそ平均的な件数だと読み取れます。
3. 食中毒事故の病因物質に関する比較
前項ではどのような食品が原因で食中毒が発生しているかをまとめておりますが、本項ではどのような病因物質(菌やウイルス、寄生虫等)が原因で食中毒が発生しているのでしょうか。原因となる病因物質ごとに下図のとおりまとめています。
主な病因物質の上位3項目は、細菌・ウイルス・寄生虫となっております。年度ごとに最上位となる病因物質が変動しており、特定の傾向はないと読み取れます。
2019年の細菌性食中毒の件数は385件と過去最少であり、平均値442件と比較すると13%発生件数が減少していることになります。
2019年のウイルス性食中毒についても過去最少の218件となっており、平均値309件と比較し、約30%も減少していることになります。
2019年の寄生虫による食中毒の発生件数は、過去最多の2018年の487件に次ぐ347件となりました。また、平均値273件から比較すると、約30%増加したことになります。
4. 食中毒事故発生施設の比較
これまで食中毒事故の発生件数、原因食品、病因物質と比較してきましたが、最後にどのような場所で食中毒事故が起こっているかを下図の通り比較していきます。
過去5年間の傾向として例年飲食店での食中毒事故発生件数が最多となっており、2位は家庭が最多となり、3位ついては年によって変動があるものの販売店が多い傾向にあります。
2019年の飲食店での食中毒事故発生件数は、過去5年間で最少となる580件となっております。平均値671件と比較し、約14%減少していることになります。
2019年の家庭での食中毒事故発生件数は、過去5年間で最多の2018年の163件に次ぐ151件となっております。また、平均値130件と比較しても約16%高く、前年よりは減少しているもののあまりよくない結果となりました。
2019年度のワースト3位の発生件数となる施設は販売店となり、過去最多の2018年度の106件に次ぐ、50件発生しております。ただし、過去5年間の発生件数の平均は52件であるため、おおよそ平均値といえます。
5. まとめ
・2019年の食中毒事故発生件数は過去5年で最少の2017年度の1,014件に次ぐ1,061件となり、比較的食中毒事故が少なかった年だといえる。
・食中毒の原因となる食品は例年1位:魚介類、2位:肉類及びその加工品、3位:野菜類及びその加工品の順に多い。
・食中毒の原因となる主な病因物質の上位3項目は、細菌・ウイルス・寄生虫となり、年度ごとに最上位となる病因物質が変動している。
・食中毒事故が発生施設している施設は例年飲食店が最多となっており、次いで家庭、3位ついては変動があるが、販売店が多い傾向にある。
以上の通り、2019年度の食中毒事故を振り返りましたが、いかがだったでしょうか。これからの季節は暑くなり、特に細菌性食中毒が発生しやすくなるためご注意ください。
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参考
・厚生労働省 食中毒統計資料 (2)過去の食中毒発生状況 「令和元年(2019年)~平成27年(2015年)食中毒発生状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html
・新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ~「新しい日常」が定着した社会の構築に向けて~
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1007942/1007957.html
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