2020年 食中毒発生状況の振り返り

今回は厚生労働省の食中毒統計資料を基に、2020年の食中毒発生状況を過去5年間のデータと比較しながら振り返ります。
2020年は新型コロナウイルスにより、様々な業界に大きな影響を与えた年となりました。その中でも、特に飲食店では休業要請や営業時間の短縮等により大きな打撃を受けたと考えられます。食中毒の発生状況のデータからもその背景が読み取れます。ぜひ最後までご覧ください。
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1. 食中毒事故発生件数の比較
まずは、2020年の食中毒発生件数と過去の5年間の発生状況を比較します。下図をご覧ください。

厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2016年~2020年のデータを基に作成
2020年の食中毒発生件数は過去5年間で最少の887件となっています。過去5年間の食中毒発生件数の平均1,086件と比較すると約20%減少し、2020年は例年に比べ大幅に食中毒事故が減少した年だと考えられます。
例年食中毒の発生件数が多い飲食店での飲食が、新型コロナウイルスの影響で減少したことも一因と推察されます。
2. 食中毒事故の原因食品に関する比較
ここでは、どのような食品が原因となって食中毒が発生しているのかを見ていきます。食中毒の原因となった食品が判明しているものの内から上位3位について下記の通りの推移を示しています。(上位3位までを表示し、4位以降または原因不明や原料が複合的もの等についてはその他として表示しています。)

厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2016年~2020年のデータを基に作成
食中毒の原因となる食品は例年1位:魚介類、2位:肉類及びその加工品、3位:野菜類及びその加工品の順に多くなっています。
2020年の魚介類が原因となる食中毒については、過去5年間で最多の2018年の414件に次ぐ299件となっています。推移としてはワースト2位となります。過去5年間の平均の発生件数は271件であり、平均値からの増加率は約10%とやや増加傾向にあることが分かります。
2020年の肉類及びその加工品については過去5年間で最少の28件となっています。過去5年間の平均値が約58.4件であり、平均値から約52%減少したことがわかります。
2020年の野菜類及びその加工品の食中毒事故については43件であり、過去5年間の平均が44件であるため、おおよそ平均的な件数だと読み取れます。
3. 食中毒事故の病因物質に関する比較
ここでは、どのような病因物質(菌やウイルス、寄生虫等)が原因で食中毒が発生しているのかを見るため、病因物質ごとに下図のとおりまとめました。

厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2016年~2020年のデータを基に作成
主な病因物質の上位3項目は、細菌・ウイルス・寄生虫となっています。年度ごとに最上位となる病因物質が変動しているため、特定の傾向はないと読み取れます。
2020年の細菌性食中毒の件数は273件と過去最少であり、過去5年間の平均値410.8件と比較すると34%発生件数が減少していることになります。
2020年のウイルス性食中毒についても過去最少の101件となり、平均値232.2件と比較し、約57も%減少していることになります。
2020年の寄生虫による食中毒の発生件数は、過去最多の2018年の487件に次ぐ395件となりました。また、平均値323.6件から比較すると、約18%増加したことになります。
4. 食中毒事故発生施設の比較
これまで食中毒事故の発生件数、原因食品、病因物質と比較してきましたが、最後にどのような場所で食中毒事故が起こっているかを下図の通り比較します。

厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2016年~2020年のデータを基に作成
過去5年間の傾向として例年飲食店での食中毒事故発生件数が最多となり、2位は家庭が最多となります。3位ついては年によって変動があるものの販売店が多い傾向にあります。
2020年の飲食店での食中毒事故発生件数は、過去5年間で最少となる375件となっています。平均値597件と比較し、約37%減少していることになります。
2020年の家庭での食中毒事故発生件数は、過去5年間で最多の166件となっています。また、平均値139.6件と比較しても約19%高い結果となりました。新型コロナウイルスの影響で外食が減り、家庭での食事が増えたことに起因すると想定されます。
2020年度のワースト3位の発生件数となる施設は販売店となり、49件発生しています。平均値56.8件と比較し、約14%減少していることになります。
5. まとめ
・2020年の食中毒事故発生件数は過去5年で最少の887件となり、近年の発生件数の平均から約20%減少しました
・食中毒の原因となる食品は例年同様1位:魚介類、2位:肉類及びその加工品、3位:野菜類及びその加工品の順に多くなっています。
・2020年はアニサキス等の寄生虫による食中毒が多く発生し、逆に細菌およびウイルスによる事故事例は過去5年間で最少でした。
・2020年は飲食店での食中毒事故件数が減少し、家庭での発生が増加しています。
以上の通り、2020年度の食中毒事故を振り返りましたが、いかがだったでしょうか。
一日も早く新型コロナウイルスが終息することを祈るとともに、食中毒事故の件数もますます減少することを切に願っております。
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Written by
株式会社町田予防衛生研究所
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本社所在地
〒194-0013
東京都町田市原町田3-9-9
許可等
参考
・厚生労働省 食中毒統計資料 (2)過去の食中毒発生状況 「令和2年(2020年)~平成28年(2016年)食中毒発生状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html
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