赤痢菌食中毒の症状や特徴、予防方法4つ
赤痢菌食中毒の症状や特徴、予防方法4つ
赤痢菌は世界で初めて日本で志賀潔によって発見され、Shigellaと命名されました。細菌性赤痢(感染症)は経口感染する急性胃腸炎で、特に赤痢菌が常在する熱帯・亜熱帯の地域で多く発生しており、輸入感染(国外で感染)例や輸入食品などから、国内でも食中毒事故に繋がる可能性があります。
また、食品や食器などから経口的に感染するため、人と人との接触が多い、保育園や学校、福祉施設、宿泊施設等では、集団感染のリスクがあります。今回は、この赤痢菌食中毒の特徴と対策をわかりやすくご紹介させていただきますので、ぜひ最後までご覧ください。
※2020年9月4日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2024年9月17日に再度公開しました。
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1. 赤痢菌とは
赤痢菌には、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、フレキシネル菌(S.flexneri)、ボイド菌(S.boydii)、ソンネ菌(S.sonnei)の4種類あります。
赤痢菌は主にヒトやサル等の霊長類に感染し、その他の動物による保菌は知られていません。赤痢菌は通性嫌気性桿菌(酸素がない状況でも生存できる菌)で、感染力が強く、少量の菌でも感染する特徴があるため、手指などを介して周囲に感染が広がる恐れがあります。特に、汚染された食品や水を摂取することで赤痢菌食中毒の事故が発生します。
【赤痢菌食中毒の症状】
感染経路:赤痢菌汚染を受けた食品、水などの摂食、食器の使用など
潜伏期間:1~7日(通常4日以内)
症状:発熱、腹痛、下痢、嘔吐などを伴って急激に発病します。重症例ではしぶり(肛門筋の痙れんにより排便が困難になる症状)を伴う便意を催し、膿粘血便(膿や粘液、血液を含む排せつ物)を少量ずつ排泄します。
多くの場合48時間以内に病状が好転し 7~10 日で完全に回復します。
【赤痢菌食中毒の発生時期・場所等】
日本国内では2024年の8月に東京都内の飲食店で提供された食品によって赤痢菌食中毒が発生しています。
東京都報道発表資料
詳細は「3.赤痢菌食中毒の事例」でご紹介します。
【赤痢菌食中毒の原因食品等】
赤痢菌食中毒の直接的な原因となる特定の食品はありませんが、調理時等に直接手指が触れ、十分な加熱を行わずに提供される食品(握り寿司等)から感染することが想定されます。また、赤痢菌は衛生状態の悪い国に多く見られ、旅行中の生水、氷、生ものは特に感染リスクが高い食品と考えられます。
その他、過去には乳幼児がおもちゃ等を口に含んだことで感染した事例が報告されています。
2. 赤痢菌食中毒の予防方法4つ
食中毒予防の基礎に関してはこちらをご覧ください。
>>食中毒と食中毒予防についてのページへ
日本人の場合、海外旅行中に赤痢菌に感染することが多いといわれているため、一番の対策は海外旅行時に赤痢菌に感染しないよう注意(生水や生ものの飲食を避ける等)することですが、国内での赤痢菌食中毒事故の発生事例もあるため、日ごろから衛生的な環境を保つことも必要です。
具体的には主に4つのポイントが重要になります。
①海外渡航時は生水や生もの等非加熱の食品を口にしない
②帰国後の検便の実施
③調理、飲食前の手洗い、調理器具・食器等の消毒の徹底
④十分加熱をして、食品を提供・喫食する
①「海外渡航時は生水や生もの等非加熱の食品を口にしない」
衛生状況の不確かな国での生水や加熱が不十分な食品を口にすることで、赤痢菌食中毒に感染する可能性があるため、海外渡航時は市販の飲料水や十分に加熱されたもののみを口にしましょう。また、渡航先の感染症の流行状況などは、下記で確認できます。
厚生労働省検疫所 FORTH
②帰国後の検便の実施
時差やハードスケジュール、環境の変化によるストレスなどで体の抵抗力が弱まり、通常なら問題にならない量の病原体で病気になることがあります。
また、赤痢菌には潜伏期間が1~7日(通常4日以内)あり、感染してもすぐには発病しない場合があります。赤痢菌は感染力が強く、少量でも被害が拡大する可能性が高いため、調理作業で手指などを介して少量の菌が食品に付着しても食中毒事故に繋がる恐れがあり、まず渡航された方が感染していないか、検便で確認することが有効です。
赤痢菌が検出された場合は、消毒や、就業制限などがありますので、症状が出ていなくても保健所へ届け出て、指示を受けてください。
③「調理前の手洗い、調理器具・食器等の消毒の徹底」
国内においても赤痢菌食中毒に感染する可能性がないわけではありません。感染者の用便後の手指から感染が拡がることがあるため、十分な手洗いと調理器具・食器等の消毒を行いましょう。
過去には井戸水の消毒不足で集団感染事例などの発生もあります。調理場で使用する水も適切に管理しましょう
また、赤痢菌は感染力が強く、わずかな菌量でも食中毒につながるため、ドアノブや手すり等人が良く手を触れる箇所の消毒も重要です。
※赤痢菌にはアルコールや次亜塩素酸水による消毒が有効です。また、酸性状態や乾燥によっても死滅するため、食材のpHコントロールや調理器具や食器の洗浄後に十分な乾燥を行うことも予防につながります。
④「十分加熱をして、食品を提供・喫食する」
赤痢菌は加熱による調理が有効とされているため、十分な加熱を行いましょう。
また、食品微生物検査で確認することをおすすめします。
衛生管理レベルの高い現場の共通点についてはこちらをご覧ください。
>>衛生管理レベルの高い現場の共通点のページへ
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3. 赤痢菌食中毒の事例
赤痢菌による食中毒事故は2024年に東京都で確認されているので下表の通りにご紹介します。
発生場所 | 東京都内、飲食店 |
---|---|
発症日 | 2024年8月1日~8月3日午前9:00 |
患者数 | 5名 |
原因食材 | 2024年7月31日及び8月1日に調理し、提供した食事 主なメニュー:バターチキンカレー、マトンカレー、グリルロールチキン、グリルロールマトン、サラダ、生春巻き、唐揚げ、ゼリー等 |
日本国内における赤痢菌食中毒の発生件数自体は少ないですが、海外の人やモノが活発に行き来することにより、赤痢菌食中毒も増える可能性があるため、十分に注意が必要です。
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4. まとめ
・赤痢菌は感染力が高く、少量であっても経口摂取すると感染する可能性が高い
・赤痢菌に汚染された水、手指で取り扱った食品や食器を摂取することで赤痢菌食中毒は起こり得る
・海外渡航の際には、渡航先の衛生状態によっては生水や加熱が不十分な食品を口にすることは避け、帰国後には検便で感染の有無を確認しましょう
・食品を取り扱う際には、調理前の手洗い、調理器具の…消毒を徹底するとともに、食材の十分な加熱により食中毒事故を防ぎましょう
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FAQ
- 赤痢菌の特徴は?
- 赤痢菌には、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、フレキシネル菌(S.flexneri)、ボイド菌(S.boydii)、ソンネ菌(S.sonnei)の4種類あります。赤痢菌は主にヒトやサル等の霊長類に感染し、その他の動物による保菌は知られていません。赤痢菌は通性嫌気性桿菌(酸素がない状況でも生存できる菌)で、感染力が強く、少量の菌でも感染する特徴があるため、感染者の排せつ物等により、手や食品がほんの少しでも汚染されていると周囲に感染が拡がる可能性があります。
- 赤痢菌食中毒の症状は?
- 赤痢菌食中毒は、発熱、腹痛、下痢、嘔吐などを伴って急激に発病します。重症例ではしぶり(肛門筋の痙れんにより排便が困難になる症状)を伴う便意を催し、膿粘血便(膿や粘液、血液を含む排せつ物)を少量ずつ排泄します。多くの場合48時間以内に病状が好転し 7~10 日で完全に回復します。
- 赤痢菌食中毒の予防方法は?
- 食中毒予防の基礎に関してはこちらをご覧ください。
>>食中毒と食中毒予防についてのページへ具体的には主に4つのポイントが重要になります。
①海外渡航時は生水や生もの等非加熱の食品を口にしない、②帰国後の検便の実施、③調理、飲食前の手洗い、調理器具・食器等の消毒の徹底、④十分加熱をして、食品を提供・喫食する
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Written by
株式会社町田予防衛生研究所
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- 厚生労働省登録検査機関(食品衛生法)
- 登録衛生検査所
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- 国際規格 [ISO/IEC 27001:2013] 認証取得
- JFS監査および適合証明プログラムに基づく監査会社
参考
・厚生労働省 4.食中毒統計資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html
・国立感染症研究所 細菌性赤痢とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/406-dysentery-intro.html
・東京都福祉保健局 食品衛生の窓 赤痢菌(Shigella)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/shigella.html
・食品安全委員会 細菌性赤痢ファクトシート
https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20111108bv1&fileId=230
・山口県感染症情報センター 感染症法に基づく消毒・厳禁の手引き 細菌性赤痢
http://kanpoken.pref.yamaguchi.lg.jp/jyoho/page5/syoudoku_2.html#section4
・東京都報道発表資料
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/08/19/07.html
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