食中毒の症状について 腹痛や下痢、嘔吐など

食中毒の症状について
一年を通して発生するさまざまな食中毒。
「食あたり」といった言葉も食中毒と同義で一般に使われています。
食中毒は、その原因によって、症状が変わってきます。
年齢や体質・体調によっても、症状の現れ方には個人差がありますが、今回は食中毒を原因物質別(細菌、ウイルス、寄生虫について)に一般的にみられる症状や危険なケースなどをまとめました。
食中毒が疑われる場合には、共通食やその症状から原因を推定し、対処・対応する必要があります。それぞれの食中毒の症状の概要を把握しておきましょう。ぜひ最後までご覧ください。
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1. サルモネラ属菌による食中毒の症状
サルモネラ属菌が付着した食品を摂取すると通常8〜48 時間の潜伏期間の後に悪心や嘔吐の症状が表れ、数時間後に腹痛や下痢などの症状が表れます。
サルモネラ属菌の種類(家禽サルモネラ感染症であるSalmonella Enteritidis等)によっては3~4日ほどの潜伏期間を経て発症することもあります。
下痢の症状は1 日数回から十数回程度で、3〜4 日持続しますが、1 週間以上症状が続く場合もあります。
症状は比較的軽く、多くの場合自然治癒により回復します。しかし、小児や高齢者の場合脱水症状により命に係わる深刻な状態になることがあります。
サルモネラ食中毒について詳しくは
>>サルモネラ食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
2. 腸炎ビブリオによる食中毒の症状
腸炎ビブリオに感染すると、潜伏期間8時間~24時間(短いと2、3時間)の後に、激しい腹痛、水様性の下痢などを主症状とし、発熱(37℃~38℃)、はき気、嘔吐等の症状が表れる場合もあります。
腹痛や下痢等の主症状は1日程度で回復しますが、高齢者や基礎疾患のある方は敗血症による低血圧、心電図異常等重篤化し、最悪の場合死に至る可能性があります。
腸炎ビブリオ食中毒について詳しくは
>>腸炎ビブリオ食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
食品微生物検査で安全性を確認
>>食品微生物検査のページへ
3. カンピロバクター属菌による食中毒の症状
カンピロバクター属菌に感染すると下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔気、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感等、他の細菌性食中毒罹患時と同様の症状が現れます。
多くの場合、1週間ほどで完治しますが、稀に感染した数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症することがあります。
カンピロバクター食中毒について詳しくは
>>カンピロバクター食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
4. 腸管出血性大腸菌による食中毒の症状
腸管出血性大腸菌は、腸管内で毒素(ベロ毒素、vero toxin ; VT)を産生し、その毒素が様々な症状を引き起こします。無症状や、下痢の症状のみで収まる場合もありますが、多くの場合、3〜5 日の潜伏期間の後、下痢、激しい腹痛、血便、水様便、発熱などの症状がでます。
発熱は軽度の場合、37℃程度の微熱であることが多いようです。また、血便が伴う場合は、出始めの頃は血液の混入は少量ですが、徐々に血液量が増加し、最終的には便成分が少なく血液そのものに近い状態の便が排出されるようになります。
子供や高齢者の場合症状が重症化しやすく、溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome, HUS)や脳症などの合併症を発症することもあり、重症の場合は死亡することもあります。
腸管出血性大腸菌食中毒について詳しくは
>>O157等の腸管出血性大腸菌食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
食品微生物検査で安全性を確認
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5. 黄色ブドウ球菌による食中毒の症状
黄色ブドウ球菌の潜伏期間は比較的短く、食後30分~6 時間程度で、悪心、嘔吐、下痢などの症状がみられます。この食中毒は悪心・嘔吐は必発症状で、嘔吐回数は摂食した毒素量により異なります。
通常、24時間以内に改善し、特別な治療は不要とされていますが、脱水症状や血圧の低下、脈拍微弱などを伴った症状により重症化する場合もあります。
黄色ブドウ球菌食中毒について詳しくは
>>黄色ブドウ球菌食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
6. ボツリヌス菌による食中毒の症状
ボツリヌス菌の食中毒は、菌が食品中で増殖した際に産生するボツリヌス毒素によって引き起こされます。
潜伏期間は、ボツリヌス毒素が産生された食品を喫食後、6時間~10日(通常18時間から48時間)後、初期症状として、嘔吐、腹痛、下痢等消化管症状を発症し、便秘になります。その後、眼瞼下垂(まぶたが上がらなくなる症状)、複視、嚥下障害、構音障害(正常に言葉を発せなくなる症状)等の脳神経障害等の症状がでますが、意識ははっきりしていて感覚障害や発熱はありません。軽度の脳神経障害のみの場合もあれば、すべての随意筋麻痺が起き重篤化する場合もあります。重症例では呼吸麻痺により死亡します。
乳児に起こるボツリヌス症もあります。この症状は便秘で気づくことが多く(多くは3日以上持続)、不活発、哺乳力低下、泣き声の減弱等の症状がみられます。また、脳神経麻痺や身体麻痺、筋緊張低下等症状が重篤化し、横隔膜まで麻痺が及ぶと人工呼吸器の使用が必要になり、最悪の場合死に至ります。
ボツリヌス菌食中毒について詳しくは
>>ボツリヌス菌食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
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7. ウエルシュ菌による食中毒の症状
ウエルシュ菌に感染すると、潜伏期間6~18 時間(平均 10 時間)の後、腹痛や下痢等の症状を起こします。発熱や嘔吐はほとんどみられません。多くの場合、発症後 1~2 日で回復するとされていますが、基礎疾患のある方や子供、高齢者の方は重症化することがあります。
ウエルシュ菌食中毒について詳しくは
>>ウエルシュ菌食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
8. セレウス菌による食中毒の症状
セレウス菌食中毒の症状は、嘔吐型と下痢型で異なります。
下表のとおり、個々の症状をまとめておりますのでご覧ください。
嘔吐型 | 下痢型 | |
---|---|---|
毒素を作る場所 |
食品内 |
感染者の小腸 |
潜伏期間 |
30分~5時間 |
6時間~15時間 |
症状等 |
嘔吐、吐き気,下痢、腹痛等の症状が表れるがいずれも軽症 |
腹痛、下痢等の症状が表れ、抵抗力の弱い方が感染すると急性肝不全を起こす可能性がある。 |
セレウス菌食中毒について詳しくは
>>セレウス菌食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
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9. リステリアによる食中毒の症状
リステリアに感染すると、38℃~39℃の発熱や頭痛、嘔吐などの症状が表れ、その他に意識障害や意識障害を引き起こすこともあります。
健康な成人の場合は無症状の場合もありますが、妊婦の方をはじめ高齢者や免疫機能の低下している方は少量のリステリアでも感染し、敗血症や髄膜炎など重篤な症状を呈し、海外では死亡例もあります。特に妊婦の方の場合は発熱や悪寒、背中の痛みが表れ、胎児にリステリアが感染し、最悪の場合流産を招く胎児敗血症を患う可能性があり注意が必要です。
リステリア食中毒について詳しくは
>>リステリア食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ

10. エルシニアによる食中毒の症状
エルシニアの潜伏期間は半日~6日で、主に発熱、下痢、腹痛などの胃腸炎の症状が表れます。2~3 歳の幼児に多く、成人ではまれです。年齢が高くなるにつれて腸間膜リンパ節炎の症状が表れることがあります。
エルシニア食中毒について詳しくは
>>エルシニア・エンテロコリチカ食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
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>>食品微生物検査のページへ
11. 赤痢菌による食中毒の症状
赤痢菌に感染すると、発熱、腹痛、下痢、嘔吐などを伴って急激に発病します。重症例ではしぶり(肛門筋の痙れんにより排便が困難になる症状)を伴う便意を催し、膿粘血便(膿や粘液、血液を含む排せつ物)を少量ずつ排泄します。多くの場合48時間以内に病状が好転し 7~10 日で完全に回復します。
赤痢菌食中毒について詳しくは
>>赤痢菌食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ

12. ノロウイルスによる食中毒の症状
ノロウイルスに感染すると、24~48時間の潜伏期間の後、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱等の主症状が表れます。特に嘔吐は突然、急激に強く起こる特徴があります。その他の症状として頭痛、咽頭痛、食欲不振、筋肉痛等が表れる事例もあります。
いずれの症状も通常3日以内で自然に回復するとされますが、乳幼児、高齢者、免疫不全等の抵抗力の弱い方は重症化することがあり、過去には死亡事例もあるため、特に注意が必要です。
一方で、症状のない、または軽度の症状しか出ない不顕性感染の方がいます。ノロウイルスを体内に保有し、排出しています。飲食に携わる方は定期的な検便を行い、感染していないことを確認しましょう。
ノロウイルス食中毒について詳しくは
>>ノロウイルス食中毒の症状や特徴、予防方法についてのページへ
ノロウイルス検便について
>>ノロウイルス検便のページへ
13. アニサキスによる食中毒の症状
アニサキスによる食中毒(アニサキス症)は、アニサキス幼虫が胃壁に刺入して生じる急性胃アニサキス症と、アニサキスの幼虫が腸壁に刺入して生じる急性腸アニサキス症があり、またアニサキスが刺入しない場合でも、アニサキスが抗原となるアレルギー症状を示す場合があります。
急性胃アニサキス症は、食後数時間後から十数時間後に、みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐を生じます。アニサキス症の多くは胃アニサキス症になります。治療法は、胃内視鏡検査時に胃粘膜に穿入する虫体を摘出します。
急性腸アニサキス症は、食後十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状を生じます。治療は対症療法で、場合によっては外科的処理が施されます。
アニサキスアレルギーについては、アレルギーに関する対処療法が必要で、アナフィラキシーの場合は、緊急に医療処置をする必要があります。
アニサキスによる食中毒について詳しくは
>>アニサキスなどの寄生虫による食中毒事故のページへ
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食品の安全を確認するには
食品の安全を脅かす危害は、「生物学的危害」「物理的危害」「化学的危害」の3つに分類されます。
なかでも主に微生物を原因とする「生物学的危害」は、実際に発生した飲食関連の事故のうち約9割を占めるといわれています。
目には見えない微生物を検査によって「見える化」し、その状態を把握することが、微生物のコントロールには必須です。
食品微生物検査では、食品の種類・製造工程・保存条件など、検査対象の状況とその目的に応じて、衛生指標菌検査と食中毒菌検査を組み合わせて行われます。
その結果から、食中毒予防やリスク低減につなげることが可能です。
また、専門機関で検査することで、検査結果から改善のアドバイスが受けられます。より安心して食品をお客様に提供しましょう。
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Written by
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本社所在地
〒194-0013
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- 国際規格 [ISO/IEC17025:2017] 認定取得(♯81094)
- 国際規格 [ISO/IEC 27001:2013] 認証取得
- JFS監査および適合証明プログラムに基づく監査会社
参考
・国立感染症研究所 サルモネラ感染症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/409-salmonella.html
・農林水産省 サルモネラ(細菌)[Salmonella Enteritidis, S. Typhimurium]
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/salmonella.html
・東京都福祉保健局 腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/tyouen.html
・国立感染症研究所 腸炎ビブリオ感染症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ta/vibrio-enteritis/1017-idsc/iasr-in/1159-iasr-d-1997-2011.html
・厚生労働省 厚生労働省 カンピロバクター属菌食中毒予防について(Q&A)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126281.html
・国立感染症研究会 腸管出血性大腸菌感染症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/439-ehec-intro.html
・厚生労働省 腸管出血性大腸菌Q&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177609.html
・食品安全委員会 ファクトシート ブドウ球菌食中毒 (Staphylococcal foodborne poisoning)
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/09staphylococcal.pdf
・国立感染症研究会 ブドウ球菌食中毒とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/component/content/article/392-encyclopedia/511-aureus.html
・国立感染症研究所 ボツリヌス症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/7275-botulinum-intro.html
・東京都福祉保健局 食品衛生の窓 ボツリヌス菌
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/boturinu.html
・厚生労働省 蜂蜜を原因とする乳児ボツリヌス症による死亡事案について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000161263.pdf
・食品安全委員会 ファクトシート ウェルシュ菌食中毒(Clostridium perfringens foodborne poisoning)
https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_clostridiumperfringens.pdf
・国立感染研究所 ウエルシュ菌感染症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/324-c-perfringens-intro.html
・国立感染症研究所 セレウス菌感染症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/sa/spiruria/392-encyclopedia/427-cereus-intro.html
・東京都福祉保健局 セレウス菌(Bacillus cereus)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/bachiru.html
・厚生労働省 リステリアによる食中毒
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055260.html
・国立感染症研究所 リステリア・モノサイトゲネス感染症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/525-l-monocytogenes.html
・東京都感染症情報センター エルシニアによる集団感染事例と豚肉からのエルシニア検出状況
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/epid/y2017/tbkj3805/
・食品安全委員会 ファクトシート エルシニア症
https://www.fsc.go.jp/sonota/hazard/H21_8.pdf
・東京都福祉保健局 食品衛生の窓
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/noro.html
・食品安全委員会 リスクプロファイル ~ 食品中のノロウイルス ~
https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20101112ik1&fileId=003
・国立感染症研究所 細菌性赤痢とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/406-dysentery-intro.html
・東京都福祉保健局 食品衛生の窓 赤痢菌(Shigella)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/shigella.html
・食品安全委員会 細菌性赤痢ファクトシート
https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20111108bv1&fileId=230
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