2023年食中毒発生状況の振り返り

2024/04/08

今回は厚生労働省の食中毒統計資料を基に、2023年の食中毒発生状況を過去5年間のデータと比較しながら振り返ります。

2023年は2022年と比較すると新型コロナウイルスによる影響が徐々に小さくなり、飲食店にも客足が戻ってきた一方、食事提供の機会が増えると食中毒事故の発生も多くなる傾向があるという注意点もあります。食中毒の発生状況のデータからもその背景が読み取れるためぜひ最後までご覧ください。

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5.　まとめ

1.　食中毒事故発生件数の比較

まずは、2019年から2023年の食中毒発生件数の推移を示します。下図をご覧ください。

厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2019年～2023年のデータを基に作成

2023年の食中毒発生件数は2020年、2021年の減少傾向から一転増加し、2022年より多い過去5年間で二番目に多い1021件となっています。
過去5年間の食中毒発生件数の平均930件を上回っており、より一層の注意が必要だと言えます。

2.　食中毒事故の原因食品に関する比較

ここでは、どのような食品が原因となって食中毒が発生しているのかを見ていきます。食中毒の原因となった食品が判明しているものの内から上位3位について下記の通りの推移を示しています。（上位3位までを表示し、4位以降または原因不明や原料が複合的もの等についてはその他として表示しています。）

厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2019年～2023年のデータを基に作成

食中毒の原因となる食品は例年1位：魚介類、2位：肉類及びその加工品、3位：野菜類及びその加工品の順に多くなっていますが、2023年は2022年に引き続き1位：魚介類、2位菜類及びその加工品、3位肉類及びその加工品の順に多くなっています。

2023年の魚介類が原因となる食中毒については、過去5年間で最多の2022年384件に次ぐ318件となっています。アニサキスなど寄生虫による食中毒事故が多く発生しており、魚介類が原因となる食中毒事故が多く発生する状況が継続しています。

2023年の肉類及びその加工品については過去5年間で二番目に多い34件となっています。

2023年の野菜類及びその加工品の食中毒事故については過去5年間で二番目に多い44件となっています。

3.　食中毒事故の病因物質に関する比較

ここでは、どのような病因物質（菌やウイルス、寄生虫等）が原因で食中毒が発生しているのかを見るため、病因物質ごとに下図のとおりまとめました。

厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2019年～2023年のデータを基に作成

主な病因物質の上位3項目は、細菌・ウイルス・寄生虫となっています。

2023年の細菌性食中毒による食中毒事故は311件で過去5年間の平均291.4件を上回っています。

2023年のウイルスによる食中毒は過去5年間で二番目に多い164件となっています。

2023年のアニサキス等の寄生虫による食中毒の発生件数は過去5年間二番目に多い456件となっています。

4.　食中毒事故発生施設の比較

これまで食中毒事故の発生件数、原因食品、病因物質と比較してきましたが、最後にどのような場所で食中毒事故が起こっているかを下図の通り比較します。

厚生労働省「過去の食中毒発生状況」2019年～2023年のデータを基に作成

過去5年間の傾向として例年飲食店での食中毒事故発生件数が最多となり、2位は家庭が最多となります。3位ついては年によって変動があるものの販売店が多い傾向にあります。

2023年の飲食店での食中毒事故発生件数は、過去二番目に多い489件となっています。

2023年の家庭での食中毒事故発生件数は、過去5年間で最少の2021年の106件に次ぐ112件となっています。

2023年のワースト3位の発生件数となる施設は販売店となり、過去5年間で最多の2022年の87件に次ぎ、二番目に多い62件発生しています。

2023年は飲食店をはじめとする上位3施設での食中毒事故件数が昨年度より増加しています。

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5.　まとめ

・2023年の食中毒事故発生件数は過去5年間で二番目に多く1021件発生しました。

・食中毒の原因となる食品は最近の傾向として１位：魚介類、2位：野菜類及びその加工品、3位：肉類及びその加工品の順に多くなっています。

・2023年はアニサキス等の寄生虫による食中毒事故数が過去二番目に多く、細菌による食中毒は平均を上回り、ウイルスによる事故事例は過去5年間で二番目に多い数でした。

・2023年は飲食店をはじめとする上位3施設での食中毒事故件数が昨年度より増加しています。

以上の通り、2023年度の食中毒事故を振り返りましたが、いかがだったでしょうか。

食中毒事故の観点から見ると2023年は2021年、2022年の増加傾向から更に増加してしまいました。新型コロナウイルス感染症の影響の減少により、飲食店等で食事提供の機会が増えたことは良いことですが、食中毒に対する対策は緩めずに行っていきましょう。

細菌性食中毒を予防するには食品微生物検査で汚染状況を確認することが有効です。

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